著者
久木野 睦子 久木野 憲司
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.751-757, 1995-08
被引用文献数
2

本研究では,生きたイカ(Sepioteuthis lessoniana)の外套膜を試料として,醤油や食塩水で加熱することによって生じる筋組織構造の変化と物性の変化を調べた.生イカの定速圧縮破断試験では,輪走筋方向に破断した方が輪走筋を横断して破断するよりも破断エネルギーは大きかった.水および各種濃度(0,1,4,22%w/v)の食塩水で加熱したイカの筋組織は,いずれの場合も,筋原線維が顕著に凝縮されている一方で,隣接する筋線維間には著しい乖離の生じていることが観察された.加熱イカ肉を輪走筋方向に破断した試験では水およびいずれの食塩濃度で加熱した場合でも著しい破断エネルギーの低下がみられたが,輪走筋を横断して破断した場合には破断エネルギーの低下はごくわずかであった.一方,醤油で加熱したイカの筋組織は,筋原線維が著しく凝縮するとともに筋線維間も密に密着しており,筋層全体が濃縮された構造が観察された.また,輪走筋方向の破断試験では著しい破断エネルギーの低下がみられたが,輪走筋を横断して破断した場合では生イカよりも有意に高い破断エネルギーが示され,このときの応力-歪み曲線は強い脆性破断の傾向を示していた.

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