著者
冨永 美穂子 石見 百江 久木野 睦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】長崎県には県内外に認知されているちゃんぽん,皿うどんをはじめ,五島うどん,島原そうめん,対州そば(対馬),甘藷を原料とする麺を使用した料理「ろくべえ(六兵衛)」(島原半島,対馬)など多様な麺・麺料理が存在する.本研究においては,これら麺・麺料理を地域の食文化として次世代に伝え継ぐことを目的に,文献,聞き書き調査,製造体験等から得られた情報を中心に麺の製造方法を含めて,麺・麺料理利用における地域特性,類似性・相違性,家庭料理としての利用状況などを把握することとした. 【方法】長崎県における麺・麺料理に関して郷土料理,郷土史に関する文献等を参考に特徴的な麺・麺料理の由来,製造方法等に関する情報を収集した.平成25,26年度にかけて長崎市,対馬市,壱岐市,雲仙市,新上五島町において現地居住歴35年以上の方20名(居住歴平均:70年)を対象に家庭料理に関する聞き書き調査を行い,昭和30~40年代当時の麺の利用に関する内容をピックアップした. 【結果】五島うどん,島原そうめんはいずれも手延べ麺であり,麺の太さが異なるのみでその製造法は同じであるが,伝承ルートは異なると考えられている.手延べ麺を釜(鍋)の中で湯炊きすることが両地域で共通して地獄炊きと呼ばれている.甘藷を原料にした麺は対馬,島原半島で共通してろくべえと呼ばれるが,麺の原料となる甘藷の加工方法が異なっている.聞き書き調査において,代表的な郷土の鍋料理の締めにそうめんが食されることが壱岐(ひきとおし),対馬(いりやき)で共通していたが,壱岐地域では県外製造のそうめんが使用されていた.昭和40年代前後,麺料理はハレの食事・行事食の中で利用されていたと考えられ,日常食としてはほとんど話題に上らなかった.
著者
久木野 睦子
出版者
活水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、イカの殺し方および保存温度の違いがイカの鮮度保持にどのように影響するか明らかにするため、異なる4つの方法で輸送したイカの保存にともなう外套膜筋肉の物理的変化を詳細に調べた。実験は4つの実験群、生きたイカを神経切断により即殺して研究室まで2時間輸送(即殺群)、生きたイカを5℃の冷蔵ボックスに入れて輸送(冷蔵輸送群)、生きたイカを氷海水中に入れて輸送(氷海水蔵輸送群)、および活魚輸送車の水槽にて生きたまま輸送(活魚輸送群)について、その外套膜を5℃で保存し、保存にともなう物理的特性の変化を調べた。その結果、氷海水蔵輸送群では筋肉細胞中のエネルギー物質であるATPが保存開始時に殆ど消失していたのに対し、冷蔵輸送群では保存6時間後に消失し、即殺群と活魚輸送群のイカでは保存6時間後も約50%のATPが残存していた。透過型電顕による筋組織構造の観察においても氷海水輸送群のイカは保存当初より大きな筋束間乖離が認められ、レオメーターによる物性の測定においてもこのことが原因と思われる特異な破断特性が氷海水蔵輸送群の外套膜筋肉に認められた。外套膜筋肉の透明度の測定では、即殺群と活魚輸送群で透明度は良く保持され保存12時間後でも筋肉の透明度が残っていたのに対し、氷海水蔵輸送群では保存開始時にすでに透明度を失っており、イカ筋肉中に残存するATP量と符合した変化のように見受けられた。そこで、即殺したイカ外套膜の薄切片を用いて、各種濃度のATPを添加した場合の透明度保持効果を調べたところ、ATP添加による透明度の保持効果は観察されなかった。
著者
久木野 睦子 久木野 憲司
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.751-757, 1995-08
被引用文献数
2

本研究では,生きたイカ(Sepioteuthis lessoniana)の外套膜を試料として,醤油や食塩水で加熱することによって生じる筋組織構造の変化と物性の変化を調べた.生イカの定速圧縮破断試験では,輪走筋方向に破断した方が輪走筋を横断して破断するよりも破断エネルギーは大きかった.水および各種濃度(0,1,4,22%w/v)の食塩水で加熱したイカの筋組織は,いずれの場合も,筋原線維が顕著に凝縮されている一方で,隣接する筋線維間には著しい乖離の生じていることが観察された.加熱イカ肉を輪走筋方向に破断した試験では水およびいずれの食塩濃度で加熱した場合でも著しい破断エネルギーの低下がみられたが,輪走筋を横断して破断した場合には破断エネルギーの低下はごくわずかであった.一方,醤油で加熱したイカの筋組織は,筋原線維が著しく凝縮するとともに筋線維間も密に密着しており,筋層全体が濃縮された構造が観察された.また,輪走筋方向の破断試験では著しい破断エネルギーの低下がみられたが,輪走筋を横断して破断した場合では生イカよりも有意に高い破断エネルギーが示され,このときの応力-歪み曲線は強い脆性破断の傾向を示していた.
著者
久木野 睦子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 生活学科編 (ISSN:0919584X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.27-31, 1998-03

本研究はイカ外套膜をしょう油液中で加熱した場合の物性変化を官能的に評価するとともに,物性におよぼすしょう油の影響を明らかにするための一助として,しょう油の溶液特性の一つである低pHの作用について実験的に検索した。その結果,より低pHのしょう油溶液で加熱した方が筋繊維に平行に破断した場合の破断エネルギーの低下は大きく,筋繊維を横断して破断した場合の破断エネルギーは大きくなる傾向にあった。また,しょう油溶液と同等のpHを示す緩衝液による加熱でもこのことは追確認された。そのため,しょう油加熱によるイカ外套膜の物性変化にはしょう油のpHが大きく影響していることが本実験結果より推察された。また,官能検査による結果は機器測定によって得られた物性測定結果と一部異なる点もあるものの,おおむね同様の傾向を示しており,機器測定による物性測定の結果はある程度ヒトの感覚を反映するものであることが示唆された。
著者
久木野 睦子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 健康生活学部・生活学科編 (ISSN:13482572)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.61-70, 2003-03-31

Using 2 types of commercial magnetic water manufacturing equipment, the effect of the magnetic water on the rice cooking was examined. The osmotic pressure of the magnetic water tended to be lower than that of tap water a little, though pH of the magnetic water was a value equal to pH of the tap water. In the measurement of water absorption rate of the rice, the difference between magnetic water and tap water could not be observed. In the physical property measurement of the cooked rice, the breaking energy of the rice cooked in the magnetic water was lower than that of the rice hooked in tap water to some extent, and seemed to be the soft rice. The tissue structure of the cooked rice observed by optical microscope, the cell of the rice cooked in the magnetic water was clearly, and it was guessed with the infiltration of the water to the rice inside. However, further examination will be necessary for clarifying the reason why the rice cooked in the magnetic water was soft.