著者
廣内 康彦 鈴木 詠子 光岡 ちほみ 金 海栄 北島 俊一 榎本 眞 久木野 憲司
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.33, pp.284, 2006

虚血による梗塞とは部位的に異なった遠隔非虚血部の黒質および視床に遅発性の障害が起こることをサルで確認できたので報告する。 5歳齢カニクイザル雄の5頭を用いて、麻酔下で内頸動脈分岐近位部のMCA本幹を縫合糸により永久閉塞し、6時間、1、2、4および8週後にMRI検索を実施、安楽死後に10%緩衝ホルマリン液で灌流固定した脳を摘出した。さらに定法に従い脳パラフィン標本を作製し、病理組織学的検索を行った。 その結果、MRI-T2強調画像上の高信号抽出像にそれぞれ一致し、梗塞側黒質と視床域にMCA閉塞1週後には浮腫を、また4週から8週後には、神経細胞の減少、軸索変性による硝子体の出現、反応性アストロサイトの増生および肥大の増強を観察した。梗巣を反映するMRI像は、その部位や浮腫および上記病変の程度と一致することから、遠隔非虚血部の障害の早期発見と病像の経時的変化を臨床的に追及できる可能性が示唆された。
著者
田中 一成 西園 祥子 加瀬 綾子 巨椋 澄子 栗田 翠 村上 智子 久木野 憲司 松本 仁 池田 郁男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.175-179, 2003-06-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
21
被引用文献数
9 10

一般に食用とされていないクロナマコの有効利用を図ることを目的として, クロナマコ摂取がラットの脂質代謝に及ぼす影響を検討した。生のクロナマコの可食部をフードカッターで粉砕し, 凍結乾燥後粉末状にしたものを試料としてラットの餌を調製した。タンパク質レベルを20%とし, クロナマコを用いた食餌ではタンパク質源としてカゼインとクロナマコを窒素含量で3:1の割合にした。対照として, タンパク質源にカゼインのみを用いたコントロール群を設けた。コレステロール (Chol) を0.2%添加したこれら飼料をSD系雄ラットに4週間自由摂食させた。クロナマコは血清および肝臓Chol濃度をコントロール群より有意に低下させ, HDL-Chol/総Chol比を上昇させた。クロナマコ摂取ラットで糞中への中性および酸性ステロイド排泄は促進した。これらの結果より, クロナマコは糞中へのステロイド排泄促進によりChol低下作用を発現することが明らかとなった。
著者
久木野 睦子 久木野 憲司
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.751-757, 1995-08
被引用文献数
2

本研究では,生きたイカ(Sepioteuthis lessoniana)の外套膜を試料として,醤油や食塩水で加熱することによって生じる筋組織構造の変化と物性の変化を調べた.生イカの定速圧縮破断試験では,輪走筋方向に破断した方が輪走筋を横断して破断するよりも破断エネルギーは大きかった.水および各種濃度(0,1,4,22%w/v)の食塩水で加熱したイカの筋組織は,いずれの場合も,筋原線維が顕著に凝縮されている一方で,隣接する筋線維間には著しい乖離の生じていることが観察された.加熱イカ肉を輪走筋方向に破断した試験では水およびいずれの食塩濃度で加熱した場合でも著しい破断エネルギーの低下がみられたが,輪走筋を横断して破断した場合には破断エネルギーの低下はごくわずかであった.一方,醤油で加熱したイカの筋組織は,筋原線維が著しく凝縮するとともに筋線維間も密に密着しており,筋層全体が濃縮された構造が観察された.また,輪走筋方向の破断試験では著しい破断エネルギーの低下がみられたが,輪走筋を横断して破断した場合では生イカよりも有意に高い破断エネルギーが示され,このときの応力-歪み曲線は強い脆性破断の傾向を示していた.