- 著者
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中西 正恵
丹羽 雅子
- 出版者
- 社団法人日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.3, pp.251-264, 2001-03-15
- 被引用文献数
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本論文では, ワンピースドレスの布の動きの美しさTAV(total appearance value)に及ぼす布の力学パラメータの影響を紹介する.歩行を模擬する動くマネキンに25種の布でつくったルーズなワンピースをランダムに着せ替えていって, 40人の女子学生がTAVを評価した.布の力学特性を, KES-FBシステムにより婦人薄手布用の標準化された条件で測定した.より密接にTAVを布の力学特性と結び合わせるためには, 測定条件を歩行中のドレスの布のかかる力レベルに近づけるよう見直すべきと考え, 我々は, 引張り・せん断測定用のKES-Labo modelを原型とした新しい測定装置を試作した.この装置を用いて, KES-FB1の条件よりも小さい力レベルでの引張り特性, および, 布に負荷する一定引張り荷重を着用時の布の自重とほぼ等価のより小さい値とし, 微小せん断ひずみ領域でのせん断特性を測定した.布の基本力学特性, 衣服の外観に関わる基本力学特性値から誘導されるパラメータのTAVへの寄与が, 重回帰分析により調べられた.これまでの婦人服の動きの美しさについての研究では, 曲げとせん断特性が主として議論されてきたが, TAVには布の引張り特性も密接に関連していることが示された.本研究での知見は, イメージした服づくりのための布の選別や新素材の開発などに応用できるだろう.