- 著者
-
藤本 尊子
丹羽 雅子
- 出版者
- 一般社団法人 日本繊維機械学会
- 雑誌
- 繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.T27-T35, 1989
- 被引用文献数
-
2
4
目的 防寒用被服材料設計のための基礎資料を提供するために, ウール及びポリエステル (PET) 繊維集合体の有効熱伝導率を標準状態にて, ThermolaboII型 (KES-F7) を応用して測定した.防寒用材料は, 添毛や充填など低密度で利用されているのが特徴なので, 繊維の体積分率10%以下の領域で, 繊維配列 (熱流に対し平行又は直角), 繊維自体の熱伝導率に及ぼす影響を調べる.測定は, 試料の平面重あるいは厚さを一定にする2つの場合について実施した.又, 保温性評価の基礎となる熱コンダクタンスに占める伝導及び輻射伝熱を簡単なモデルを適用して分画する.成果 (1) PET繊維集合体の有効熱伝導率は, 繊維自体の熱伝導性の異方性を反映して, 熱流に繊維が直角に配列した場合著しく高く, 体積分率に比例して増加するが, ウールスライバーでは, 異方性は小さく, 増加も少ない.(2) 厚く, 低密度の集合体では, 輻射による熱輸送が急増する.重量が一定で厚さを変化させた場合は, 体積分率に反比例して熱の輸送率が増える.厚さが一定で体積分率が変化する場合は, 体積分率の減少とともに輻射の寄与は増大するが, その増加はゆるやかである.(3) 構成繊維が太いほど, 繊維集合体の有効熱伝導率は高い.これは, 集合体内部での繊維同志の接触面, 又, 質量当りの表面積の変化によると考えられる.