著者
小松 かおり 丹羽 雅子
出版者
The Textile Machinery Society of Japan
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.T158-T165, 1978-11-25 (Released:2010-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

目的 衣服の構造が定まっている紳士用スーツの仕立て映えを, 布の力学的性質から予測する方法を提案する.本報では, 秋冬物スーツ地に比べ薄くて仕立てにくく, また仕立て映えしにくいといわれる夏物スーツ地の仕立て映えを, 布の力学的性質から予測する方法を導びき, 予測式の妥当性を検討する.また, 仕立て映えする布の力学的性質の特徴を明確にする.成果 1) 夏物スーツの仕立て映えには, 布の曲げ・引張り・せん断の三つの基本力学特性の寄与が大きい・そして仕立て映えする布のそれらの特性の範囲は比較的狭く, その特徴が捉えられた.2) 曲げ特性の中でもよこ糸方向の曲げの性質, 次いでよこ糸方向の引張り特性の寄与の度合いが, 他の特性に比べて大きい.これらの性質は, 衣服の形態を形づくり, 形態保持に関係する.3) 曲げ・引張り・せん断の三つの基本力学特性の組み合わせで, 簡単にしかもかなりの精度で, 仕立て映えを予測する式を導いた.
著者
丹羽 雅子
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.22, no.236, pp.383-391, 1973-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

In textile industry, performance of the fabrics is still out of the engineering design, because of the difficulty in designing the proper mechanical properties of fabrics, and also of the difficulty in evaluating the performance where the evaluation has been done by a sensory method named "hand-feel" by experts.In this article, recent developments in the theoretical research on the mechanical properties of fabrics are introduced. Theoretical methods of calculating the non-linear property in biaxial and uniaxial tensile deformations of plain woven, plain knitted and inter-lock fabrics are presented here. And bending and shear properties of plain woven fabrics are also dealt with.Furthermore, a new method for evaluating "hand-feel" is introduced; the mechanical properties of fabrics are first characterized and represented by sixteen number of characteristic values obtained by the measurements of mechanical, physical and geometrical properties of the fabrics, and then using a linear model, the "hand-feel" value is calculated from these characteristic values. The agreement between the conventional sensory and the new instrumental methods is demonstrated.
著者
藤本 尊子 丹羽 雅子
出版者
一般社団法人 日本繊維機械学会
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.T27-T35, 1989
被引用文献数
2 4

目的 防寒用被服材料設計のための基礎資料を提供するために, ウール及びポリエステル (PET) 繊維集合体の有効熱伝導率を標準状態にて, ThermolaboII型 (KES-F7) を応用して測定した.防寒用材料は, 添毛や充填など低密度で利用されているのが特徴なので, 繊維の体積分率10%以下の領域で, 繊維配列 (熱流に対し平行又は直角), 繊維自体の熱伝導率に及ぼす影響を調べる.測定は, 試料の平面重あるいは厚さを一定にする2つの場合について実施した.又, 保温性評価の基礎となる熱コンダクタンスに占める伝導及び輻射伝熱を簡単なモデルを適用して分画する.成果 (1) PET繊維集合体の有効熱伝導率は, 繊維自体の熱伝導性の異方性を反映して, 熱流に繊維が直角に配列した場合著しく高く, 体積分率に比例して増加するが, ウールスライバーでは, 異方性は小さく, 増加も少ない.(2) 厚く, 低密度の集合体では, 輻射による熱輸送が急増する.重量が一定で厚さを変化させた場合は, 体積分率に反比例して熱の輸送率が増える.厚さが一定で体積分率が変化する場合は, 体積分率の減少とともに輻射の寄与は増大するが, その増加はゆるやかである.(3) 構成繊維が太いほど, 繊維集合体の有効熱伝導率は高い.これは, 集合体内部での繊維同志の接触面, 又, 質量当りの表面積の変化によると考えられる.
著者
諸岡 晴美 丹羽 雅子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.486-493, 1988-11-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
6

布と皮膚との摩擦係数に影響を及ぼす布の水分率依存性を検討するために, 肌に直接つける肌着用編布 (スポーツシャツ用編布を含む) 14点を試料とし, 標準状態, 20℃, 93%RH内での調湿および50%, 100%水分率の計4段階の布の含水状態下で布と皮膚との摩擦係数を10gf/cm2の圧力下で測定した.被験者は成人女子5名とし, 左前腕内側面を測定部位とした.一方, KES表面試験機により標準状態下で測定した布の摩擦係数μKから布と皮膚との摩擦係数μs (R) を予測する方法を検討した.その結果,1) 種々の繊維組成, 編布構造をもつ肌着用編布についてμs (R) に及ぼす布の水分率Rの影響を定量的に捉えた.2) 標準状態下で測定されるμKを用いて, 標準状態での平衡水分率以上, 100%水分率以下の任意の含水状態でのμs (R) を予測する式を誘導し, これにより個人差の範囲内でμs (R) を予測できることを明らかにした.
著者
中西 正恵 丹羽 雅子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.251-264, 2001-03-15
被引用文献数
2

本論文では, ワンピースドレスの布の動きの美しさTAV(total appearance value)に及ぼす布の力学パラメータの影響を紹介する.歩行を模擬する動くマネキンに25種の布でつくったルーズなワンピースをランダムに着せ替えていって, 40人の女子学生がTAVを評価した.布の力学特性を, KES-FBシステムにより婦人薄手布用の標準化された条件で測定した.より密接にTAVを布の力学特性と結び合わせるためには, 測定条件を歩行中のドレスの布のかかる力レベルに近づけるよう見直すべきと考え, 我々は, 引張り・せん断測定用のKES-Labo modelを原型とした新しい測定装置を試作した.この装置を用いて, KES-FB1の条件よりも小さい力レベルでの引張り特性, および, 布に負荷する一定引張り荷重を着用時の布の自重とほぼ等価のより小さい値とし, 微小せん断ひずみ領域でのせん断特性を測定した.布の基本力学特性, 衣服の外観に関わる基本力学特性値から誘導されるパラメータのTAVへの寄与が, 重回帰分析により調べられた.これまでの婦人服の動きの美しさについての研究では, 曲げとせん断特性が主として議論されてきたが, TAVには布の引張り特性も密接に関連していることが示された.本研究での知見は, イメージした服づくりのための布の選別や新素材の開発などに応用できるだろう.
著者
丹羽 雅子 中西 正恵
出版者
奈良女子大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

衣服の外観の美しさ、着やすさを含む人間の感性と適合した高品質衣服を設計するに当って、衣服の形成能、仕立て映え等に関する布の客観的性能評価法の確立が重要である。しかし、これまで、衣服設計は主としてデザイナ-の感性に基づき、その経験と勘によってなされてきている。衣服が工業生産される今日、特に婦人服は、従来からの天然、人造繊維による多岐にわたる素材に加えて、高度な繊維集合体製造技術を駆使した合成繊維織物"新合繊"や新世代ウ-ル等が開発され、これまでの衣服素材とは異なる全く新規な素材の出現をみるに至っている。しかし、これらの新しい素材の衣服の最適なシルエットデザイン、ならびに可縫性を見きわめた縫製システム制御に関しては、従来の経験を適用することが不可能で、多くのリスクのもとに衣服生産がなされ、そのリスクを背負った消費生活が強いられている。本研究は、より快適な衣生活の実現を目指し、高品質衣服の生産と消費のサイクルを資することを目標として、布の基本力学特性から衣服の最適シルエットをデザインする方法を開発し、その実用性については国内外のこれらに関連する研究分野の技術者の協力を得てフィールドワークによって確認した。他方、高品質衣服を構成するに際して、布の基本力学特性に基づいて最適な縫製の工程設計ならびに工程制御が必要とされることから、シームパッカリング、縫目破損、縫目滑脱の生じない最適な縫目を形成するための縫糸、縫針、ミシンの調整などを選定し、制御する方法等について以下の基礎的知見を得た。(1)布の基本力学特性に基づく高品質衣服のための最適シルエットデザインとそれぞれの最適シルエットの得られる高品質布地の持つ力学的性質の範囲を明確化。(2)高品質衣服生産のための縫製システム制御の基礎的研究として、レーザ光を利用した試作パッカリング検出装置によるパッカリングの客観的評価法の開発と、最適縫目を得るためのミシンの動的上下糸張力の測定法の開発と理論的解析に基づく縫製条件の設定、制御のための基礎的資料の整備。(3)布の基本力学特性に基づく高品質衣服生産のための縫製工程のシステム化とフィールドワークによるその妥当性の検証。