- 著者
-
鈴木 敏
安藤 広志
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
- 巻号頁・発行日
- vol.79, no.7, pp.1291-1300, 1996-07-25
- 被引用文献数
-
11
本論文では2次元射影像のみから複数の3次元物体の認識・類別を行う神経回路モデルを提案する. 本モデルは複数のモジュールからなり, モジュール間で競合を行いながらそれぞれのモジュールで入力射影像の圧縮・復元を学習する. その結果, 各モジュールはそれぞれ一つの物体の射影像のみを復元できるようになり, その復元精度から物体の類別を行うことが可能となる. この過程では物体のラベル等の教師信号は不要である. 更に, 本モデルでは入力特徴を限定していない. すなわち, 入力情報を画像濃淡値としても, 各特徴点の座標としても同様のネットワーク構造で扱うことができる. 本論文では本モデルの詳細を説明すると共に, 計算機実験の結果も併せて提示する. この実験結果は, 視点方向によらない3次元物体の認識が教師信号なしに可能であり, 各モジュールの内部表現 (圧縮表現) は視点方向に等価であることを示している. これは2次元情報のみからの3次元情報の推定を意味している. また, 脳内の神経結合と比較して, 情報の圧縮・復元過程は二つの視覚領野間の双方向結合に, モジュール間の競合は視覚領野内の水平方向の結合に対応づけて考えることができる.