- 著者
-
川合 英夫
- 出版者
- 日本海洋学会
- 雑誌
- 海の研究 (ISSN:09168362)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.4, pp.341-349, 2001-07-05
- 参考文献数
- 42
- 被引用文献数
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2
近年, 朝鮮半島の国々は国連地名標準化会議などの席上で,「日本海」の名は旧日本による植民地政策の遺産だという理由で, その改称を要求している。この問題に関連して調べた結果を報告する。まず, 日本海を含む総計11の縁海の命名法を分類し,「日本海」という名が, この海が縁海として存立するために不可欠な, 母大洋たる太平洋から縁海の日本海を隔離している主要列島弧の名に因んでいて地理学的にも妥当なことを指摘する。次に, 調べた日本語事典7編はすべてKrusensternをもって「日本海」の名の初記載者と誤認していた背景に触れる。最後に, 西洋製, 日本製いずれの地図でも「日本海」の名が1800年頃から慣用され, 明治維新頃に定着するに至った経過を, 地図一覧・地図資料 (青山, 1997) と古海流図 (1837〜1887) を併用し, 1/3世紀別の地図出現回数の変遷により確認する。日本による半島の植民地支配の罪過は重く大きいが,「日本海」の名の地図における慣用・定着はこれとは無関係のことである。