- 著者
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岩佐 光啓
- 出版者
- 岩波書店
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.4, pp.347-353, 1996
- 参考文献数
- 6
- 被引用文献数
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クロコバエ科(Milichiidae)のGenus Desmometopa(クロコバエ属;新称)のハエの日本産の種については, 福原(1965)が3種を記録して以来, 分類学的研究はなされていなかった。本報告では, いままで記録されていた3種について次のように整理し, さらに2新記録種を追加した。D. tarsalis Loew(ミナミクロコバエ)と同定されていたものはD. microps Lambで, D. tristicula Hendel(ヒメクロコバエ)と同定されていたものはD. sordida Fallenであることがわかった。また, D. palpalis de Meijere(ヤマトクロコバエ)は, 現在D. singaporensis Kerteszのsynonymになっている。日本新記録種は, D. m-nigrum (Zetterstedt)(ホホブトクロコバエ;新称)とD. varipalpis Malloch(ナミクロコバエ;新称)の2種であった。日本産5種について特徴となる図とともに再記載を加え, 検索表を付した。本属の幼虫は腐食性または糞食性で, 糞, 堆肥, 動植物質の腐敗物などから発生する。成虫は人類親和性の種が含まれ, しばしば大発生し, 食品工場や家屋, 病院の室内, トイレなどに侵入することが知られている。