著者
飯室 勇
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.27-37, 1956
被引用文献数
1

1.チョコレート, チーズ, 米などで繁殖と温度, 湿度の関係を検討した.繁殖の適温, 適湿は概ね25℃, 75〜84%R.H.である.これは餌料の性状や保水量による差異を考慮にいれても, 許容範囲は極く狭いものと考えられる.2.高温の影響を顕微鏡用加温装置及び熱電堆を用い実験した.高温に対する抵抗は従来想像されていたより甚だ弱く, 35℃以上は致死高温帯であり, 50℃, 47℃では瞬間的に死滅する.3.低温の影響はその繁殖度, 生存期間などによつて観察した.1〜5℃, 76%R.H.の低温環境では繁殖は認められず活動も停止する.5週間後の生存率は25%で, その67.6%は後若虫である.後若虫は耐寒性が著しく強く, この時期が主な越冬形態かと考えられる.4.硝子管の両端に各種の過飽和塩類溶液を使用して異つた湿度を与えた実験では, ケナガコナダニは21〜22℃で75〜84%R.H.を最も選好する.5.20℃, 75%R.H.でチーズにより行つた繁殖と発育期別調査では, 新しい環境におかれた集団は3週間で若返りの現象を呈し, 25日後には成虫を主とした集団となつた.1カ月後には平衡状態となり以後は繁殖力の微弱となる傾向をみせ, 漸次集団は老衰してゆくのが認められた.6.ダニの重量を計量し, 這い出し個体の成虫集団では1gに104, 947のダニを算えた.本論文の一部要旨は1955年4月京都に於ける第14回日本医学会総会第7回日本衛生動物学会で発表した.本研究を指導された佐々学助教授, 実験に協力をえた田中寛, 林滋生, 緒方一喜, 鈴木猛, 三浦昭子氏らに深謝する.

言及状況

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