- 著者
-
甲田 茂樹
安田 誠史
豊田 誠
大原 啓志
- 出版者
- 公益社団法人日本産業衛生学会
- 雑誌
- 産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.3, pp.91-100, 1998-05-20
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
-
4
嘱託産業医活動を活性化させる要因について:甲田茂樹ほか.高知医科大学公衆衛生学教室-嘱託産業医への産業医報酬や事業所への訪問状況, 事業所における有害業務の有無が産業医活動内容や評価に与える影響を明らかにしたいと考えた.高知県内の労働基準監督署に届け出のあった嘱託産業医308名のうち, 現在嘱託産業医を行っている237名に対して産業医活動内容やその問題点など関する自記式アンケート調査を郵送法で実施した.さらに, その嘱託産業医を選任している638事業所のうち, 所在地の明らかな628事業所に対して産業保健活動や産業医に対する評価・要望などに関する自記式アンケート調査を郵送法で実施した.なお, 有効回答率は嘱託産業医で44.3%, 事業所で53.0%であった.産業医報酬の支払われている場合には, 事業所への訪問頻度が高く, 健康相談や衛生管理者と話し合いなどがよく持たれており, この傾向は産業医報酬が5万円を超えると強くなっていた.事業所側からみると, 産業医報酬を支払っている事業所は安全衛生管理体制が整っており, 産業保健活動も活発であり, 産業医の安全衛生委員会への出席や事後措置への関与している比率が高く, 産業医の助言への評価も高くなっていた.事業所への訪問頻度の高い嘱託産業医は健康相談や衛生管理者との話し合い, 安全衛生委員会への出席, 健康保持増進対策の勧奨など, 積極的に産業医活動をよくこなしていた.事業所における有害業務の有無は, 産業医活動に全く影響を与えていなかったが, 産業医を選任している事業所側からみると, 有害業務が存在する場合, 安全衛生管理体制の整備, 衛生管理者や産業医の職場巡視などの法定業務の実施状況率が高く, 産業医の助言への評価も高く産業医への要望もより具体的なものとなっていた.嘱託産業医活動を活性化させるためには, 産業医報酬やその職務を明記した契約を事業所と結び, 法定の産業医活動が行えるように事業所に訪問することが重要である.有害業務の存在は, 嘱託産業医活動に影響を与えなかったが, 選任している事業所からすると, 産業保健活動を認識する重要なきっかけとなっていた.