著者
山口 裕文 梅本 信也 前中 久行
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.249-257, 1998-10-30
被引用文献数
15 11

大阪府堺市における整備段階の違う水田において5月から12月の間, 約1月間隔で畦畔植生を調査し, 出現する種の構成と多様性の変化を検討した。棚田地帯の隣接した水田から, 伝統的水田, 基盤整備後1年目の水田, 基盤整備後5年を経過した水田を選び, 畦畔の平坦面の植生を全推定法により調査した。未同定種を含めて161種の植物の生育が認められた(Table 1)。伝統的畦畔には83種, 整備後5年を経た畦畔(5年畦畔)では92種, 整備後1年目の畦畔(直後畦畔)では94種が認められたが, 群落を構成する種は大きく異なっていた(Table 2)。伝統的畦畔では, 在来の多年草が有意に多く, チガヤ, ヨモギ, ノチドメ, スイバが優占し, 半地中植物が多い傾向にあった。また, 帰化植物は, 非常に少なかった。5年畦畔では, 多年生帰化植物が多く, 春にはカラスノエンドウが, 秋にはメヒシバが優占し, 帰化植物率が高かった。直後畦畔では, イヌビエやイヌタデの出現が顕著で, 在来および帰化の1年草(1回繁殖型植物)の生育が多く, 在来の多年草は少なかった。伝統的畦畔では, 種多様度が高く, 冬季にも多様度は低下しなかった(Fig. 1)。直後畦畔では春季の種多様度は比較的高かったが, 夏季から冬季に向かって多様度の顕著な低下がみられた。5年畦畔では種多様度はやや低く, 季節変動も小さかった。基盤整備により改修された畦畔では本来の畦畔植生への遷移とは異なる系列を辿っていると考えられた。

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