著者
佐藤 治雄 狩屋 桂子 前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.109-112, 1996-03-29
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

時代及び年齢成長にともなう身近な景観や生活の変化が住民にどのように認識評価されているのかを把握する目的で,琵琶湖湖岸2集落(滋賀県中主町野田,能登川町乙女浜)でアンケート調査を実施した。生活体験の変化パターンは調査項目により様々であったが,牛の飼育など2,3の項目を除き,両調査地間に大差はなかった。また,五右衛門風呂に入った,自家用車があるなど多くの項目で高度成長期を境に急激な変化があった。過去の大規模事業として圃場整備,内湖の干拓,河川改修などをあげる人は若年齢層より高齢層の方が多かった。調査結果には生活体験,景観の変化が大規模事業の進捗など社会情勢の変化と密接に関連しつつ現れている。
著者
村上 健太郎 前中 久行 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.15-20, 2003 (Released:2005-09-16)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

京都市内の孤立林22箇所および京都盆地周辺にある山林内において, 生殖様式や受精様式,染色体の倍数性の異なるシダ植物の種数,優占度を調べた。山林と孤立林における二倍体種,高倍数体種の種数および被度を比較した場合,孤立林において二倍体種の種数,被度は減少した。孤立林の林床では,山林に比べて,高倍数体無配生殖種の割合が高かった。これは無配生殖種が,必ずしも水分を必要としない,より簡便な生殖法を持っていることが影響していると考えられた。自家受精ができない二倍体種は,十分な湿度と他の個体から生じた複数の胞子がある場所でしか更新することができないので,孤立距離の増大や林床の乾燥化とともに移入率が低下すると考えられ,高倍数体無配生殖種や林床性の二倍体種の割合は都市化の指標となりえることが考察された。
著者
佐藤 治雄 前中 久行 川原 淳
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.515-520, 1997-03-28
参考文献数
8
被引用文献数
3

測量時期の異なる国土地理院地形図をもとに,琵琶湖湖岸城の昭和30年頃からの約30年間にわたる土地利用の変化を調査した。この期間に行われた河川改修や内湖干拓,土地改良事業,鉄道・道路網の整備などが要因となり,市街地面積は湖東城で2倍,湘南城で3倍に急増し,その変化は湘南城ではやく起こった。また,水田面積は昭和30年頃から45年頃まで湘南域での減少と湖東城での内湖干拓による増加が釣り合い,37 3%から35 7%へ微減したが,その後昭和60年頃までに30.6%へ急減し,多くは市街地に転換された。このような大規模な土地利用変化には,大きな社会資本の投入をともなう国や県レベルでの政策決定が大きく寄与した。
著者
大窪 久美子 前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.109-112, 1995-03-31
被引用文献数
16 12

畦畔草地は個々の規模は小さいものの,多様な半自然草地が成立し,農業生態系においては多様な生物のすみかとして重要な役割を担っている。しかし近年,基盤整備事業が進行するなかで,かつては普通にみられた畦畔草地は減少,変化しつつある。そこで本研究では,畦畔草地群落の現状と基盤整備の影響を把握するため,4地域において植生調査等を行った。大規模な基盤整備が行われた地域の群落は,帰化率が高<多様性は低かった。一方,基盤整備が行われていない地域では帰化率が低く,多様性の高い群落から低い群落まで,多様なタイプの群落が存在した。この多様な群落の存在が,地域としての生物群集の種多様性を高めるものと考えられた。
著者
夏原 由博 村上 真樹 青木 大輔 中山 祐一郎 前中 久行
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.565-568, 2008-03-31 (Released:2009-05-08)
参考文献数
31

Identifying conservation units in a species and prioritizing their conservation were attempted in order to efficient conservation practice. We defined a conservation unit as a distinct populations between which individuals cannot be exchanged because of unique genetic and ecological characteristics. Conservation priority was given to conservation units that were restricted in distribution or those where habitats were not protected, because habitat loss is one of the most important factors leading to species extinction. We identified a gap between species distribution and conservation status using the land use master plan. We considered nature conservation areas, natural park areas, and protected forest areas as protected land, urbanization promotion areas as not protected, and agricultural promotion areas and private forest areas as at intermediate risk. The Japanese clouded salamander Hynobius nebulosus was used as a model species. An assessment was carried out after defining the conservation units of this species based on reported geographic variation in allozyme, mt-DNA, or morphology. The presence/absence of the species and land use regulation were recorded on a 1-km grid. The greatest numbers of records of species occurrence were in agriculture promotion areas (17.4%) and private forest areas (39.5%) with 791 records. Of the ten conservation units, the Tottori population was given at highest priority for conservation.
著者
前中 久行
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.48-55, 2001-03-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
6
被引用文献数
7 3

ある植物が, その植物固有の性質として雑草性をもっているとしても, 人間活動を妨害していなければ現実の雑草ではない。自然環境の構成要素として, 人間が植物に求めている役割には, 植物が存在することで生じる機能, 景観・緑環境の形成要素, 文化財や生活のアメニティ要素, 生物的自然要素がある。農耕地では雑草である植物が, 市街地においては, このような働きを果たすこともある。代表的な場面が, 地面が植物で被われることが, 第一義的に意味をもつ, 芝生地やのり面である。現実に大阪府下の公園緑地の芝生地には, スズメノカタビラ, シマスズメノヒエ, シロツメクサなどが優占する。踏みつけ強度のやや低いと思われる草地では, 出現する種類数が増加し, ニワゼキショウ, カタバミ, セイヨウタンポポなどが出現するようになるなど, 利用の実態に応じた芝生ができあがっており, 多様なレクリエーション活動に役だっている。造成後時間をへたのり面で, 出現頻度が比較的高いものは, 当初の緑化草種ではなく, ススキ, セイタカアワダチソウ, チガヤ, メリケンカルカヤなど, 後から侵入した植物であるが, これらも, 土砂流出防止や裸地の視覚的遮蔽などの効果をもっている。セイタカアワダチソウを, 6月から9月まで時期をかえて刈り取った場合, 成長シーズンの終わりの地下部の現存量は, 地下部への蓄積が開始される8月に刈り取ったときに最も小さくなった。6月刈の場合, 開花時期は無刈り取りとほぼ同じであった。7月刈はややおくれて11月上旬に開花し, 草丈は約60cmであった。6月刈や7月刈では, 花序, 草丈ともに小型化したために, 通常の見苦しさがなく観賞にも耐える状況であった。
著者
村上 健太郎 松井 理恵 森本 幸裕 前中 久行
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.139-144, 2004-08-31
被引用文献数
4 7

1996年に造成後,8年が経過した都市内復元型ビオトープ「いのちの森」において,現段階でのシダ植物の種多様性の評価を試みた。種数一面積曲線を用いて,「いのちの森」の近郊にある孤立林39箇所との比較を行ったところ,「いのちの森」の種数は,高い水準にあることがわかった。また,「いのちの森」の木道下では,シダ植物の種数は他の孤立林比較調査区に比較して多かった。ただし,木道下以外の林床では,種数,対数逆Simpson指数ともに高い程度にあるとは言えなかった。よって,「いのちの森」は,他の孤立林に比べると,種数が多いと言えるが,これは木道下の適度に暗く湿った隙間環境が種数を増加させていると考えられた。
著者
高橋 理喜男 前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.24-37, 1977-02-20
被引用文献数
2 3

自然環境の管理保全の目標に適合したレクリエーション利用の適正密度基準を求めるため,奈良公園若草山の自然草地を研究対象として,レクリエーション利用密度と草地植生の群落的形質との生態的関連性を解析した。もっとも利用者の集中する春秋2季のうち,1973年1月初旬の休日2日間をえらび,地上各出入口において,30分単位で入退山者数を記録するとともに,合計6回にわたって,草地における滞留者の分布状態を空中写真によって捉えた。その結果を25mメッシュに切った1/2500の地形図上に,各撮影時刻毎にメッシュ当り利用密度分布図を作成した。利用密度と植生タイプとの関連性を,空間的広がりの中で考察していくためには,利用密度階級によって分けたメッシュ群が,ある程度安定した恒常性をもっていることが条件となる。その点を「平均相対利用密度」を用いて検証を試みた結果,空からの調査回数が少いため若干のフレを伴っているけれども,恒常性の条件をほぼ満たしていると判断された。一方,春と秋の2回にわたって植物社会学的植生調査を実施し,草地の群落的組成を明らかにするとともに,その空間的配分を示す植生図を作成した。さらに利用密度との比較検討ができるように,1つは相観タイプにより,もう1つは群落タイプによって,それぞれメッシュ単位から成る植生図に編成した。相観タイプについては,ススキ優占草地とシバ優雨草地とがメッシュ内に占める被度の割合に応じて,ススキ型,シバ型それぞれ3種類と裸地化型の計7タイプを設定した。また群落タイプの方は,ススキ群落を除外し,ススキ群落からシバ群落への移行帯を特微づけているチカラシバ型と,シバ草地を形成しているネズミノオ型,典型シバ型,ギョウギシバ型の4タイプに分けた。そこで,年間を通じて,入山者の最も多いクラスに属する11月3日の,しかも最高滞留者数を記録した13時の5,512人を基準にして,前述の「平均相対利用密度」階級を具体的な利用密度階級に換算して植生タイプとの比較を試みた。その結果,ha当り20人以下の利用密度にとどめておく限り,ススキ草原としての景観的存続は保証され,400人ぐらいまでなら,ススキ優占がつづく。しかし,500人を境として,シバ型へ転向し,900人を超えると典型的シバ草原が成立する。さらに,1,300人以上になると,激しい踏圧によって裸地化の前駆相ともいえるギョウギシバ型がとって代ることになる。
著者
岡本 紘典 前中 久行
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.804-807, 2010-03

緑化において重要となるのは植栽基盤となる土壌である。特に都市部においては、舗装面の土壌はコンクリート構造物などに取り囲まれているのが現状である。この場合、客土に使われた土壌が弱酸性であっても、コンクリートから溶脱する成分が植栽土壌をアルカリ性に変えることが懸念される。一般の成熟土壌の常識範囲を超えた異常な強酸性やアルカリ性土壌の出現、街路樹調査でアルカリ性の影響が見られた例、土壌アルカリ化の傾向が見られた報告もある。土地改良法の改正により、環境との調和と適切な維持・管理・更新に配慮した資材の検討が叫ばれるようになり、それに関連した資材として植栽ポッドや景観舗装コンクリートなどがある。コンクリートはセメントの水和反応により生じた水酸化カルシウムを含んでいるため、pH12.6程度の高いアルカリ性を示しており、土壌アルカリ化の要因としてコンクリートからのアルカリ分の溶出が考えられる。水酸化カルシウムは水溶性であるため、施工後の早い時期から溶出が起こると推測される。本研究では、コンクリートからのアルカリ分の溶出に着目し、初期状態における溶出状況の把握を目的とした。
著者
前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.205-210, 1985-03-30

摘要 草地に加わるレクリエーション利用圧は延へ滞在時間・人て表現するのか最も良いか,これは最大滞在者数と「平均利用時間」の積として求めることもでき,この関係を用いると調査の能率を上けることかてきる。各地の公園利用調査をもとに検討した結果,平均利用時間は近郊地の園地ては42〜50時間,都市基幹公園内ては54〜64時間,住区基幹公園内では70〜89時間の値か得られた。
著者
前中 久行 大窪 久美子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.143-148, 1986-03-31
被引用文献数
3 1

大阪府下の主要な7公園で区域を定め、休日の芝生他の滞在者数調査を行なった。各公園の平均滞在者密度は7調査地中4ヶ所が約50人/haであった。これらの公園ではカセクサ、シマスズメノヒエなど踏み跡植物が高頻度で出現した。この踏み跡植物を利用密度の指標として大阪府下の各地各種の草生地の構成種を位置づけ、レクリエーション利用と植生の関係を検討した。
著者
山口 裕文 梅本 信也 前中 久行
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.249-257, 1998-10-30
被引用文献数
15 11

大阪府堺市における整備段階の違う水田において5月から12月の間, 約1月間隔で畦畔植生を調査し, 出現する種の構成と多様性の変化を検討した。棚田地帯の隣接した水田から, 伝統的水田, 基盤整備後1年目の水田, 基盤整備後5年を経過した水田を選び, 畦畔の平坦面の植生を全推定法により調査した。未同定種を含めて161種の植物の生育が認められた(Table 1)。伝統的畦畔には83種, 整備後5年を経た畦畔(5年畦畔)では92種, 整備後1年目の畦畔(直後畦畔)では94種が認められたが, 群落を構成する種は大きく異なっていた(Table 2)。伝統的畦畔では, 在来の多年草が有意に多く, チガヤ, ヨモギ, ノチドメ, スイバが優占し, 半地中植物が多い傾向にあった。また, 帰化植物は, 非常に少なかった。5年畦畔では, 多年生帰化植物が多く, 春にはカラスノエンドウが, 秋にはメヒシバが優占し, 帰化植物率が高かった。直後畦畔では, イヌビエやイヌタデの出現が顕著で, 在来および帰化の1年草(1回繁殖型植物)の生育が多く, 在来の多年草は少なかった。伝統的畦畔では, 種多様度が高く, 冬季にも多様度は低下しなかった(Fig. 1)。直後畦畔では春季の種多様度は比較的高かったが, 夏季から冬季に向かって多様度の顕著な低下がみられた。5年畦畔では種多様度はやや低く, 季節変動も小さかった。基盤整備により改修された畦畔では本来の畦畔植生への遷移とは異なる系列を辿っていると考えられた。
著者
大窪 久美子 前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.193-198, 1992-03-31
被引用文献数
2 4

野生草花の保全を目的とする半自然草地の管理を検討するため,クマイザサSosa senanensisの優占程度が異なる二つの群落において,時期を変えた刈取り実験を行った。刈取り区には6,7,8,9月刈り,無処理区を設け,二年続けて同じ処理を行った。その間,無言期に毎月一回追跡調査を行い,群落の動態を解析した。また,地域周辺でみられる主な植物について,フエノロジー調査を行った。マツムシソウ等の草本植物を庇陰してしまうクマイザサは,8,9月刈で再生を著しく抑制された。一方,野生草花の開花期は7月下旬から8月下旬に集中していた。刈取りの競合植物への影響が最大になる時期と野生草花への影響が最小になる時期とで刈取りの適期を議論した。