著者
曹 徳弼
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.372-379, 2000-10-15

需要の変動はトレンド(線形と非線型), 周期変動(季節変動含む), およびばらつきに分類することができる.トレンドや周期が一定である場合には予測モデルを用いてそれを抽出することができ, ばらつきは安全在庫で対処すればよい.また, トレンドや周期がダイナミックに変化する場合には予測モデルを逐次修正する方法と安全在庫をダイナミックに変化させる方法が考えられる.本研究では予測モデルの修正(予測モデルの再同定, バラメータの再推定, 再学習など)に手間がかかことや, バイヤス発生の確認が遅れることなどを考慮し, 予測モデルを逐次修正する方法の補助的な方法として, 過去一定期間における予測誤差の平均とばらつきに基づいて安全在庫をダイナミックに変化させる方法を提案した.提案法の有効性を検証するために本研究では, 単段階在庫システムにおいて移動平均法に基づいて需要予測を行う発注点方式を対象に, 異なる4つの需要パターンのもとで, 需要が安定していることを想定して安全在庫を計算する方法(方法A), 理想的な予測手法を想定して安全在庫を計算する方法(方法B), および予測のバイアスの存在を無視して安全在庫を計算する方法(方法C)など3つの方法と, 平均在庫水準および欠品率を評価基準に比較実験を行った.その結果, 需要のパタンが変化する場合には提案法がA, C両方式に比べて平均在庫をそれぞれ50%近く削減し, 提案法の有効性が示された.また, B方式は提案法より平均在庫が少なく, パターンの変化を素早くキャッチする予測手法の確立が大変重要であることを確認できた.

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