- 著者
-
岸 恵美子
- 出版者
- 一般社団法人 日本女性心身医学会
- 雑誌
- 女性心身医学
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.2, pp.226-237, 2002
- 被引用文献数
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本研究の目的は,介護者が有効にサービスを利用できる支援のあり方を検討するために,性役割意識が介護への考え方および介護サービス利用に及ぼす影響を明らかにすることである.研究方法として,介護講座受講生に自記式質問紙調査を実施し,371名から有効回答を得た.利用することに最も抵抗を感じる介護サービスは,「特別養護老人ホーム」,次いで「ショートステイ」「ホームヘルプサービス」であった.性役割尺度得点は,介護について,「家族の力で行うべき」「介護は女性が担うべき」「介護は長男の嫁が行うべき」「子どもに介護してもらいたい」という考えに肯定的な者では有意に低くなっていた.またサービスを利用することについて,「人を頼むと気を遺う」「人を頼むと周囲の批判の目が気になる」「人を頼むと罪悪感を感じる」「介護者の犠牲は仕方がない」,という考えに肯定的な者では,同様に性役割尺度得点が有意に低くなっていた.サービス利用への抵抗感があり,サービスを利用しないで家族で介護すべきという考え方に肯定的な者では,性役割尺度得点が有意に低く,伝統的性役割意識が強いことが明らかになった.必要なサービスを利用できるよう,介護者の性役割意識に直接働きかける支援と,意識改革のための健康教育の重要性が示唆された.