著者
岸 恵美子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.194-199, 2017-05-31 (Released:2019-11-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

いわゆる「ごみ屋敷」とは,ごみ集積所ではない建物で,ごみが積み重ねられた状態で放置された建物,もしくは土地を指す。居住者が自ら出したごみだけでなく,近隣のごみ集積所等からごみを積極的に運び込む「ため込み」の行為がある場合は,特に対応が困難である。いわゆる「ごみ屋敷」の人たちの多くは,セルフ・ネグレクトといわれる。筆者らは,文献検討と研究成果から,セルフ・ネグレクトを「健康,生命および社会生活の維持に必要な,個人衛生,住環境の衛生もしくは整備又は健康行動を放任・放棄していること」と定義した。支援者が対応に困難を感じる事例は多いが,実際には,本人が「困りごと」を抱えているのである。「支援を求める力が低下,あるいは欠如している人」ととらえ,ごみを片づけることを目標とするのではなく,信頼関係を構築し,本人の「自己決定」を尊重し,安全で健康な生活へと導くことが支援として重要である。
著者
岸 恵美子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.226-237, 2002
被引用文献数
2

本研究の目的は,介護者が有効にサービスを利用できる支援のあり方を検討するために,性役割意識が介護への考え方および介護サービス利用に及ぼす影響を明らかにすることである.研究方法として,介護講座受講生に自記式質問紙調査を実施し,371名から有効回答を得た.利用することに最も抵抗を感じる介護サービスは,「特別養護老人ホーム」,次いで「ショートステイ」「ホームヘルプサービス」であった.性役割尺度得点は,介護について,「家族の力で行うべき」「介護は女性が担うべき」「介護は長男の嫁が行うべき」「子どもに介護してもらいたい」という考えに肯定的な者では有意に低くなっていた.またサービスを利用することについて,「人を頼むと気を遺う」「人を頼むと周囲の批判の目が気になる」「人を頼むと罪悪感を感じる」「介護者の犠牲は仕方がない」,という考えに肯定的な者では,同様に性役割尺度得点が有意に低くなっていた.サービス利用への抵抗感があり,サービスを利用しないで家族で介護すべきという考え方に肯定的な者では,性役割尺度得点が有意に低く,伝統的性役割意識が強いことが明らかになった.必要なサービスを利用できるよう,介護者の性役割意識に直接働きかける支援と,意識改革のための健康教育の重要性が示唆された.
著者
岡本 玲子 岩本 里織 西田 真寿美 小出 恵子 生田 由加利 田中 美帆 野村 美千江 城島 哲子 酒井 陽子 草野 恵美子 野村(齋藤) 美紀 鈴木 るり子 岸 恵美子 寺本 千恵 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.47-56, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24

【目的】本研究の目的は,東日本大震災で津波災害を受けた自治体の職員が,震災半年後に印象に残ったこととして自発的に語った遺体対応業務とそれに対する思いを質的記述的に解釈することである.【方法】対象は一自治体の職員23名であり,個別面接により被災直後からの状況と印象に残ったことについて聴取した.【結果】自治体職員として行った有事の業務に関する262のデータセットのうち遺体対応に関するものはわずか21であった.遺体対応業務には,震災後,直後からの遺体搬送,約2か月間の遺体安置所,約3か月間の埋火葬に係る業務があった.それぞれの業務に対する職員の思いは,順に,「思い出せない,どうしようもない」,「精神的にやられた,つらい」,「機能マヒによる困惑」が挙がった.【考察】避難所と物資の業務については,創意工夫や今後の展望などが具体的に語られたのに比べ,遺体対応については非常に断片的であり,話すことにためらいが見られた.遺体対応業務は通常業務とは全く異質なものであり,準備性もないまま遂行した過酷なものであった.我々は有事に起こるこのような状況について理解し,今後に備える必要がある.
著者
山岸 恵美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.287-293, 1995

1962~1992年度の給食管理実習における献立と調理法及び食品の購入価格について調査検討し, 次の結果を得た。<br>1) 主食の様式はいずれの年度も米飯を主とする和風が多く, 特に1982年度以降は71~85%に達した。内訳は, 白飯と変わりご飯が最も多かった。<br>2) 主菜の様式は, 1972年度以降では和風よりも洋風が多かった。主菜の調理形態は, 揚げ物と焼き物で57~80%を占めていた。また, 1980年度以降は, 豆腐やおからを挽肉に混合した和風ハンバーグや鶏肉のみそ焼きなど和風形態の焼き物が出現し, 動物性脂肪の摂取を抑制した食生活が認められた。<br>3) 副菜の様式では, 和風が52~89%と多かった。調理形態は和え物が8~67%, 煮物が4~29%であった。<br>4) 漬物はほとんどが, はくさい, キャベツ, きゅうりなどの即席漬であったが, 摂取頻度は経年的に減少し, 1986年度以降は5%以下となり, 減塩を意識した食生活が認められた。<br>5) 本学における実習の献立は, 和・洋・中華の混合型が多く, この形態は栄養面や価格面などの視点からは合理的な献立であることが示唆された。<br>6) 汁物は1978年度以降, みそ汁が33%以下に減少し, すまし汁とコンソメスープが増加した。<br>7) デザートは経年的に著しく増加し, その調理形態も生鮮果実類をそのまま切断したものから, 果実類を寒天で固めたものやヨーグルト和えに変化した。<br>8) 38種類の食品の購入価格の年次推移は, 卵類, 砂糖類では2倍以下, 鯨肉を除く獣鳥肉類, 乳類, 油脂類, 調味料の一部は2~3倍, 精白米, みそ, 温州みかんは約5倍に上昇していた。<br>9) いも類, 魚介類, 野菜類の購入価格は, 食品の種類によって大差があった。魚介類では, さんま, さば, あじ, たら, するめいかなどが11~18倍に上昇して, 食費の9.6倍を上回っていた。<br>10) 1食の食費に占める穀類, 魚介類, 獣鳥鯨肉類, 乳類・卵類, 野菜類 (いも類含む), 果実類の価格の変動比率を食品群別に検討すると, 穀類が経年的に低下して, 1962年度の36%が1992年度では16%を示した。<br>11) 1食の食費に占める魚介類の価格の比率は5~14%で, 獣鳥鯨肉類の9~28%よりも低かった。また, 乳類・卵類は両者合わせても4~9%であった。<br>12) 1食の食費に占める野菜類 (いも類含む) の価格の比率は, 摂取量の増加に伴い上昇し, 1962年度の15%が1992年度では27%になった。果実類は1962年度1%, 1992年度7%で食費に与える影響は少なかった。
著者
岩本 里織 岡本 玲子 小出 恵子 西田 真寿美 生田 由加利 鈴木 るり子 野村 美千江 酒井 陽子 岸 恵美子 城島 哲子 草野 恵美子 齋藤 美紀 寺本 千恵 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.21-31, 2015

目的:本研究は,東日本大震災により被災した自治体における職員の身体的精神的な健康に影響を与える苦悩を生じる状況を明らかにすることを目的とした.<br/>研究方法:研究参加者は,東日本大震災で甚大な津波被害を受けたA町職員30名であり,半構成質問紙による個別面接調査を行った.調査内容は,被災後の業務で印象に残っている内容や出来事などである.分析は,研究参加者の語りから,身体的精神的健康に関連している内容を抽出しカテゴリ化した.<br/>結果:研究参加者の平均年齢は40.6歳,男性17人,女性13人であった.研究参加者の語りから2つのコアカテゴリ,9つのカテゴリ,19のサブカテゴリが抽出された.<br/>結論:被災した自治体職員は,自身も被災者であり家族など親しい人々の死にも直面し,職務においては,津波による役所建物などの物的喪失や同僚の死による人的喪失が重なり,業務遂行の負担が大きく,身体的精神的健康に影響を与えていることが考えられた.震災後の早期から職員の健康面への継続的な支援が必要である.
著者
山岸 恵美子
出版者
長野女子短期大学出版会
雑誌
長野女子短期大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-55, 2000-12-20

終戦直後における食教育としての調理実習は、食材料である食品が著しく不足していたために、全国的に非常に困窮していた。その一端を旧制、長野県女子専門学校(県立、3年制)の調理実習ノートで検討すると、つぎの通りである。1)乏しい材料下でも調理の基本から応用、ハレの日の料理、テーブルマナーなどの専門教育が実施されている。2)料理に使った食品の残り物や廃棄物の再利用、調理過程における熱源の節約指導が徹底している。3)1・2年次とも地場生産物である豆類・種実類・野菜類の使用量は多いが、動物性たんぱく質源である魚介類・獣鳥肉類・卵類・乳類などは使用量が非常に少なく、入手困難であったことが認められる。4)米に代わるエネルギー源として、じゃがいも・さつまいも・かぼちゃなどが出現頻度高く、使用量も多い。いも麺・三色いも餅・かぼちゃの寄せ物などの料理がある。5)1年次には放出物資(ガリオア資金によるアメリカからの食料援助物資)である脱脂大豆粉やとうもろこし粉を使用した料理が目立つ。例えば、脱脂大豆粉を材料とした、とうふ・ちくわ・おやき、とうもろこし団子のおはぎなどがある。6)紅茶、コーヒーなどの飲み物は、小麦粉・大麦粉・脱脂大豆粉・黒豆粉を妙って代用している。7)さとうの使用量は1年次では非常に少ないが、2年次になると他の調味料の出回りと共に使用してきている。人工甘味料であるズルチン・サッカリンも料理に取り入れている。8)マヨネーズは塩と酢に小麦粉やじゃがいものうらごし、脱脂大豆粉などを混ぜたもので代用している。9)1食当たりの米の使用量は150gで、現在の女子学生の使用量よりも多い。また、みそ汁の濃度も、水180mlにみそ20~30gで塩分濃度は高く、当時の食生活状況が推測される。10)代表的な料理を6種類選んで作成再現し、デジタルカメラで撮影して画像で示すとともにその料理の栄養摂取状況等を検討した。その結果、脱脂大豆粉・とうもろこし粉・いも類・かぼちゃ・その他の野菜類の大量摂取によって、たんぱく質・ビタミン類・ミネラル・食物繊維などはかなり多く摂取できていることが認められた。また、脂質の摂取量が少なく、アミノ酸スコアやPFCエネルギー比率が良好な料理もあり、現在の食事改善の参考になる。