- 著者
-
藤本 雅子
前川 喜久雄
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.102, no.248, pp.29-34, 2002-07-19
- 被引用文献数
-
1
「疑い」や「落胆」などのパラ言語情報は日常の話し言葉では頻繁に生じる現象であるが,その生成メカニズムはよく理解されていない.パラ言語情報の伝達メカニズムを解明するための研究の一貫として,高速デジタルビデオによる喉頭の観察を実施した.3種類のパラ言語情報(「中立」「疑い」「落胆」)を意図して発話された一語文/駅/における声門面積と声帯間距離を計測した.またModal,Breathy,Creakyなどの発声様式による孤立母音/e/のデータを別途測定し,両者を比較した.その結果,「中立」発話ではModa1な発声が観察されるのに対して,「落胆」ではbreathyな,「疑い」ではcreakyな発声が行なわれていることが確認できた.パラ言語情報に起因するこのような発声様式の変化が母音部にも子音部にも観察され,発話の全体を通して維持されていることから,パラ言語情報に起因する発声様式制御の領域は発話全体であることが示唆された.換言すれば個々の分節音の制御ではなく,声質の制御であることが示唆されていると考えられる.