- 著者
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清水 竜瑩
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.p98-141, 1992-06
大企業経営者に,その企業のもつ問題点,それに対する対処策ないし戦略,それを支える人間の組織,人間の評価についてインタビュー・サーベイを行った。問題点としては組織の硬直化が最も多い。創業時代のイメージを持ち続けたままの大規模化(セゾン),過度の堅実経営による大企業病(八十二銀行),図面通りつくるまじめ体質からの硬直化(日本エアブレーキ),旧い枠をたえず崩す必要のある体質(三菱油化),生産続行しながらの工場移転(三菱製鋼),モノカルチュアによる利益の不安定性(三井製糖),リストラのための就職斡旋(三菱マテリアル)など。対処策ないし戦略としては,トップの果敢な意思決定,研究開発の強化,多角化などがある。みんなが反対のときゴー(三菱油化),60%賛成があれぼゴー(三井製糖),経営者の体臭を企業文化に浸透(セゾン),社長の研究現場まわり(日本新薬),制御技術を応用した多角化(日本エアブレーキ),地域密着型の販売系列会社を使った多角化(井関農機),自社の力の限界を前提とした多店舗展開(ユニー),東京の一極集中を県の活性化に積極的活用(埼玉県),現場職長クラスのノウハウの活用(三菱製鋼),孫下請会社の積極的協力(島津製作所)など。人間の組織,人間の評価については業績主義・能力主義を主張するものが多い。人事評価の基準は環境と企業の関数であって変化する(セゾン),人事評価基準は業績プラス能力(三菱マデリアル),人事評価基準は業績プラスプロセス(八十二銀行),不適材不適所の配置による人材育成(八十二銀行),東南アジア出身のドクター採用による活性化(太陽化学),従業員持株制度の強化による不満解消(東洋水産)など。