著者
清水 龍瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.110-162, 1992-10-25

今回のサーベイでは,個性的な問題把握・対処策・経営管理を遂行している企業が高業績をあげていることが解った。他社にまねられない強み,それをベースにした競争優位の戦略をたて遂行しているからである。若い人は自分の興味のある問題には驚異的なエネルギーを出すからこれを組織化する(ピア),人間の尊厳と企業の価値観との共通部分を大きくするためにpeace of mind事業に特化する(セコム),テナントを入れると,同時にing情報を入手して不安定なファッション性と財務の安定性を統合する(パルコ),コンピュータに回線をつなげるのではなく,回線にコンピュータをぶらさげるのだという,不連続的飛躍が必要である(インテック),social communication gift businessという友情ビジネスを原点にし他社にまねられない著作権の強みを発揮する(サンリオ),若いクラフトマンの養成と年とったクラフトマンの技能のデジタル技術化とによって競争力を強化する(佐々木硝子),日本で急増した鉄屑を原料にして大型電気炉による薄板生産に注力し,NIESにまけない価格で薄板を供給する(東京製鉄),社長が調理場をまわり,管理職のファイルをつくって顔を憶えファミリー感覚を浸透させる(帝国ホテル)。以上の企業は巨大企業ではない。社長の個性が企業文化の中に深く浸透し,企業に強い個性ができ,これが他社にまねられない強みになっている。一方規模の大きい歴史の旧い装置産業は生産技術の改善に力を入れ競争力をつけようとする。従来のノウハウを生かしたセンサーを用いて光ファイバーの自動連続生産に力を入れる(古河電工),同じ生産設備を効率よく稼働させるために新しい触媒の開発に力を入れる(三井東圧)。さらに人事評価に独自性を見出す企業もふえてきた。業績考課と能力考課に分け,前者では上司と部下との意見をフィードバックさせるが後者ではフィードバックさせない(栗田工業),成果,役割行動,能力の3つで絶対評価するが,役割評価はグループ内で一生懸命やって成果が上らない場合の補償措置とする(横浜ゴム)。さらに素材産業はいわゆる盛田論文に反論し,旧来からの経営の常識を強調する。短納期,低価格,高性能が競争力の源泉である(三井ハイテック),よい製品を安く社会提供するのが製造業の使命(住友軽金属)という。

言及状況

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こんな論文どうですか? 社長および各界リーダーのインタビュー・サーベイ(16)(清水 龍瑩),1992 http://id.CiNii.jp/RCkFL

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