著者
笠井 昭次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.49-70, 1993-12-25

会計(学)と簿記(学)との関係と言えば,一見,過去のテーマのように思われるが,しかし,けっしてそうではない。簿記教育の側面および理論研究の側面のいずれにおいても,今日なお,重要な意義を帯びているのである。まず前者の簿記教育面であるが,今日にもなお,資本等式が生きていると主張されることがある。財産計算の体系である資本等式は,とうてい,損益計算にかかわる今日の複式簿記実践の説明理論たり得ない。それにもかかわらず,そうした主張がなされるというのは,損益計算体系性の説明ということより,むしろ貸借複記に基づく複式簿記の自己完結的な機構そのものの説明が主題になっていると考えざるを得ない。つまり,簿記学という感覚での教育がなされているのである。ここに,会計(学)と簿記(学)との関係が問題になるのである。次に理論研究面であるが,今日,複式簿記が軽視されているにもかかわらず,現実に取り上げられているのは,損益計算書・貸借対照表等の複式簿記により産出される情報だけなのである。そうであれば,複式簿記機構の特質を理解しないかぎり,損益計算書・貸借対照表等の特質も明らかにならないはずである。したがって,この複式簿記の意義を今日の会計学のなかに適切に位置づけることが,どうしても必要になる。本稿は,複式簿記をもって会計の構造とみる立場から,会計(学)と簿記(学)との関係を論じている。

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