著者
清水 龍瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.55-81, 1994-08-25

今回のサーベイでは,戦後はじめての長期不況に対して各企業が,それぞれどのような固有な問題を持ち,その対処策として,それぞれどのような強み,特に主力製品の強みに集中して,問題を解決しようとしているかを調査するものである。この不況への対処策として各社の社長が共通に考えていることは,人事評価の革新による,組織の活性化であることがわかった。過去の経験から一番手の商品以外は生き残れないことを知り,今は一番手になる新製品の開発にだけ力を入れる。企画マンと営業マンとが議論して目標数値をきめ,営業マンはもちろん,企画マンもその達成値によって人事考課される(メルシャン)。今まで自動車メーカーの特注測定器だけをつくってきた。これからは標準品をつくっていく。リサーチ用機器には技術優位性があるから,円高でも輸出市場で,まだ値上げの余地がある(小野測器)。オリジナリティ,クリエイティヴィティを重視する企画提案型製造小売業になる。企画担当マネジャー,デザイナーの育成を重視する。人事評価では,価値ある失敗を価値なき成功より高く評価する(キャビン)。製品ドメインを国際化にさらされる部分と,さらされない部分にわける。前者では今までの仕組みを保護規制から自由化への関連で深く考える。後者では収益強化の新しい仕組みを考える。人事評価は上に行くに従って能力主義から実績主義に変える。ネアカの人間を高く評価する(明治乳業)。問題点を内と外の2つにわける。前者は大企業病であり,後者は報復関税など国際的政治経済問題である。前者には長期的な組織制度の開発が必要であり,後者には短期的な対症療法しかない。人事評価の中心は能力開発であり,具体的には,前後工程を学ぶ交叉訓練と,上司をとりかえることによる教育とがある(セイコーエプソン)。時計,メガネはその心臓部は大企業にしかできないが,付加価値を高めるフレームなどの部分は零細企業がつくるという,非常に特殊な製品である。この心臓部とフレームをコントロールするのは卸売業である,と自社の強みを浮きぼりにする。バブル崩壊は3年で安定すると予測する。海外派遣人間はネアカを第1条件にする(服部セイコー)。問題点はいくつかあるが,増収増益をつづけているため,長期的な中間管理者の人事評価が問題の中心になる。製品ごとのブランドマネジャー制をひいているため,その人事評価基準は「経営者としての資質」の改善である。社長が全中間管理者170人1人ひとりに面接し,減俸までも相手に納得させる(日清食品)。問題点は,値頃感と品質のよい商品を調達・開発することと,時間欠乏症の顧客に対して,対面販売ではない,セルフサービス方式の導入など,従来の百貨店構造を変えることである。人事評価は,上司,部下,同僚の3者が行う。またプロジェクトに対しては,企画と執行とを同一者に担当させて実績評価する。企画者と執行者を別々に評価しない(三越)。

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こんな論文どうですか? 社長および各界リ-ダ-のインタビュ-・サ-ベイ-20-メルシャン社長,小野測器社長,キャビン社長,明治乳業社長,セイコ-エプソン社長,服部セイコ-社長,日清食品(清水 竜瑩),1994 … https://t.co/ZRUOlDmhyj
こんな論文どうですか? 社長および各界リーダーのインタビュー・サーベイ(20) : メルシャン社長,小野測器社長,キャビン社長,明治乳業社長,セイコーエプソン社長,服部セイコー社長,日(清水 龍瑩),1994 … https://t.co/ZRUOlDmhyj
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