- 著者
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下村 彰男
- 出版者
- 社団法人日本造園学会
- 雑誌
- 造園雑誌 (ISSN:03877248)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.5, pp.241-246, 1993-03-24
- 被引用文献数
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明治以降の近代観光の展開の中で,温泉地の滞在空間としての魅力低下の原因の一つとして,温泉地空間の構造性の弱化があげられる。本報では,近世において形成された温泉地空間の構造性が,交通機関や土木・建築技術の進展,観光の大衆化(大量化)などの影響を受けて,徐々に損なわれてゆくプロセスを明らかにすることを目的とする。対象地として,空間構造の変容程度に差異のある熱海(大),伊香保・草津(中),城崎(小)を取り上げ,空間構成(要素+構造)の変遷を調査し,分析を行った。その結果,温泉地が近世の湯治場から明治・大正の保養温泉地,そして昭和の温泉観光地へと展関する過程で,その空間構成は,開放系化,集合体化,均質空間化か徐々に進み,これら各ベクトルが複合して,構造性の弱化が進んだことが明らかとなった。