著者
奥富 清 亀井 裕幸
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.77-87, 1980-12

1. 近年異常に繁殖している自然教育園のシュロの開花・結実個体群, いわゆる成熟個体群の構成について調べた。またそれとの比較のため, 都下府中市栄町のヒノキ・シュロ混植林のシュロについても同じくその成熟個体群の構成を調べた。2. 1980年夏現在, 自然教育園に生育している幹高0.55m以上のシュロの総数は1,060本であった。このうち今までに開花歴のある成熟個体は186本(17.6%)で, それらは小は幹高1.5mクラスのものから大は現存個体中最大の5.2mクラスのものに及んでいる。また, シュロの総個体数に対する成熟個体数の割合は幹高の増大とともに増し, 4.1-4.5mクラスで80%を超える。3. 自然教育園での1980年夏の開花雌株は54本であった。これは各幹高にわたっているが, 幹高の増大に伴なう個体数の増減傾向はみとめられなかった。しかし総個体数に対する割合は幹高の増大に伴なって増加し, 4.1-4.5mクラスで通常の最大期待値である50%に達する。このことは, 自然教育園では今後, 幹高が4.5mを超えるシュロの約半数を種子供給源とみなしてよいことを示している。4. 自然教育園では, 各幹高クラスの成熟個体の割合, 当年開花雌株の割合とも, 林縁生のシュロの方が林内生のシュロよりも高い。5. 上記2〜5にあげた自然教育園のシュロ成熟個体群の構成上の諸傾向は, 府中市のヒノキ・シュロ混植林のシュロに対しても程度の差はあれ当てはまる。6. 1980年に自然教育園で開花した54本のシュロ雌株の種子生産量を概数10,000〜20,000粒と推定した。この数値は不作を示し, その原因として, この年の夏の日照不足・低温とともに, アオバハゴロモ幼虫のシュロ果穂への寄生があげられた。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

@nack5akira シュロじゃないですかね? http://t.co/iA3PvCf http://t.co/gQLKU2I

収集済み URL リスト