- 著者
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菅原 十一
- 出版者
- 国立科学博物館
- 雑誌
- 自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, pp.37-46, 1995-03
- 被引用文献数
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2
自然教育園は,マンモス都市「東京」の都心部にある自然緑地であるところがら,酸性雨の影響が大いに気になるところとなっている。今回は,1993年6月〜12月及び1994年1月〜12月の雨水pH測定結果をもとに,自然教育園における酸性雨の特性について検討を行った。(1) 雨水pH値は,最低pH3.7〜最高pH6.7の範囲にあるが,季節や雨量・雨の強弱によりさまざまに変化し,概略次にあげる傾向が指摘された。(2) 低pH5.0未満の酸性雨は,異なる2期の季節パターンを示していた。暖侯期を中心とした4月〜11月には全体の68%と過半数を占めるが,寒侯期を中心とした1月〜3月・12月には強い北西風が空を吹き払い40%に減少する傾向にある。(3) pH4.0未満の強酸性雨は,降り始め10分間に3mm〜6mm以上の急雨になったときみられやすい傾向にある。(4) 酸性雨は,降り始めにみられやすいが,雨量20mm以上では次第にpH5.6の通常雨にもどっていた。逆に,雨量20mm以下では,通常雨にもどりにくいことが考えられた。(5) 雨量1mm以下の霧雨や小雨及び降り始めの微少雨の間は,中和されやすく酸性雨となりにくい傾向にある。(6) このような「都心の中和霧」には,主に自動車走行により発生したコンクリートやアスファルトのアルカリ性粉塵が微細雨滴にとりこまれ中和剤の働きをしていると考えられた。(7) 自然教育園においては,年間降雨回数の内の78%が酸性雨となりやすく,特に,58%は一旦酸性雨となると通常雨に回復しにくい雨で占められる傾向にある。