- 著者
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小竹 佐知子
- 出版者
- 日本獣医生命科学大学
- 雑誌
- 日本獣医畜産大学研究報告 (ISSN:03738361)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.19-39, 2004-12-01
- 被引用文献数
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『アンネの日記完全版』に記載された食物関連事項の内容から,隠れ家生活における食糧事情を検討した。日記は4.3日に1回の割合で書かれており,そのうちの64%の日に食物関連事項が認められた。2年1ケ月に及ぶ隠れ家生活での食糧事情は,前期・平穏期,中期・悪化期,後期・困苦期の3期に分けられた。隠れ家生活開始直後の平穏期は,充分な貯蔵食糧の存在と比較的容易な食糧調達により,不自由な中にも新しく始まった"隠れ家"生活での食事を楽しむ余裕があった。悪化期は,品薄,品質劣化が目立つようになり,隠れ家での閉塞的な生活による精神的疲労も加味された時期であった。最後の困苦期は,少ない食糧の配分で隠れ家内のメンバー間のいさかいが頻発し,食事を抜く節約法をとらざるを得ない状況であった。隠れ家生活を支援していた人たちの逮捕も,食糧調達を危うくし,隠れ家内のメンバーヘのストレスは大きかった。