著者
小竹 佐知子 乙黒 親男
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.212-218, 2013 (Released:2014-09-17)
参考文献数
21

“Kari-kari ume” is a product of Japanese apricot (ume fruit) brined mixing with calcium compounds, and its crispy texture is very unique. Ume fruit should be harvested in the early stage of maturation. It means the content of citric acid is low, and the ratio of hydrochloride acid soluble pectin to water soluble pectin is high. The concentration of calcium ions should be more than 0.16% to the fresh fruit weight to attain sufficient crispness, but not more than 0.32% to avoid bitterness. It is necessary for calcium ions to uniformly disperse from the peel to the end of the flesh. Polysaccharides of cell wall bounded to each other by the linkage of calcium ions provide appropriate hardness (crispness) of fruit flesh. Calcium reagents such as calcium hydroxide, calcium lactate, calcium oxide are utilized, and calcium carbonate shows less effect on hardening flesh. Various materials such as egg shell incinerated at more than 720℃ and oyster shell incinerated at more than 1000℃, which contain calcium oxide, are also utilized. The concentration of sodium chloride reached 20% after brining, and the fruit is desalting once and then seasoned using a sodium chloride solution at a lower concentration (about 9%).
著者
大久保 恵子 小竹 佐知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.105, 2009

目的 江戸後期史家頼山陽の母・頼梅颸没後の喪祭供え物献立にみられる食品の内容を検討した。方法 頼(らい)家に伝わる「梅颸御供」に使用された食品を皿ごとに分析し、また使用食品が贈答の場合の贈り主の状況について調査した。結果 献立冊子(頼山陽史跡資料館所蔵)は表紙に「朝夕奠御献立 上・中・下」と書かれた3分冊になっており、全部で52丁から成る。梅颸死去(1843(天保14)年)の2日後(発引=出棺の日)の12月11日から1月29日までの48日間の膳の献立が順番に綴じられており、資料の散逸・欠損などはみられなかった。発引の日は朝奠と夜祭奠の二膳のみであったが、それ以降は朝奠、午後奠(午奠)、夕奠の三膳が供えられた。朝奠は猪口、御汁、御平、御飯、御香物、御酒あるいは御湯の膳構成が主であった。午後奠には菓子と茶が供えられていた。また、夕奠は朝奠の膳にさらに御向詰、御肴が加わったものが主であった。食材料に畜鳥肉は用いられておらず、野菜類、根菜類、魚類、海草類、茸類が使われていた。この膳供物をおこなう時期は、ちょうど年中行事の年末および正月にあたっており、そのため、供物食品のなかには、雑煮(1/1-3)、七草粥(1/7)、小豆粥(1/15)などがみられた。午後奠の菓子は全部で33種(63個)が供えられており、このうちの17%が知人からの到来品であった。
著者
小竹 佐知子
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
日本獣医畜産大学研究報告 (ISSN:03738361)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.19-39, 2004-12-01
被引用文献数
1

『アンネの日記完全版』に記載された食物関連事項の内容から,隠れ家生活における食糧事情を検討した。日記は4.3日に1回の割合で書かれており,そのうちの64%の日に食物関連事項が認められた。2年1ケ月に及ぶ隠れ家生活での食糧事情は,前期・平穏期,中期・悪化期,後期・困苦期の3期に分けられた。隠れ家生活開始直後の平穏期は,充分な貯蔵食糧の存在と比較的容易な食糧調達により,不自由な中にも新しく始まった"隠れ家"生活での食事を楽しむ余裕があった。悪化期は,品薄,品質劣化が目立つようになり,隠れ家での閉塞的な生活による精神的疲労も加味された時期であった。最後の困苦期は,少ない食糧の配分で隠れ家内のメンバー間のいさかいが頻発し,食事を抜く節約法をとらざるを得ない状況であった。隠れ家生活を支援していた人たちの逮捕も,食糧調達を危うくし,隠れ家内のメンバーヘのストレスは大きかった。
著者
赤池 実希 神宮司 広美 小竹 佐知子 乙黒 親男 赤池 実希 神宮司 広美 小竹 佐知子 乙黒 親男 Miki AKAIKE Hiromi JINGUJI Sachiko ODAKE Chikao OTOGURO アカイケ ミキ/ Akaike Miki ジングウジ ヒトミ Jinguji Hiromi オダケ サチコ Odake Sachiko オトグロ チカオ Otoguro Chikao
出版者
山梨県立女子短期大学
雑誌
山梨県立女子短期大学紀要 (ISSN:03850331)
巻号頁・発行日
no.29, pp.107-117, 1996-03-31

Ume fruit brined with 0-0.9% calcium hydroxide on a fruit weight basis was either non-exposed or sun-exposed, and subsequently colored with new coccine, acid red, red cabbage color or perilla color. A comparison was made between the sun-exposed and non-exposed samples by Hunter L-, a- and b-values as objective measurements and by sensory evaluations as a subjective measurement. It was confirmed that the color change with each colorant had almost reached equilibrium after 7 days. It was also noticed that the dye effect of red cabbage color and perilla color was weaker than that of new coccine and acid red. The L-, a- and b-values of the sun exposed samples were higher than those of the non-exposed and non-exposed samples with any colorant. The sun-exposed samples were evaluated as being lighter, redder and more preffered than the non-exposed samples with all colorants by the sensory test.
著者
小竹 佐知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.88, 2009

目的 食品咀嚼中に食品から放散する香気は、食品のおいしさを決める最終的な判断基準の一つとなることから重要と考えられる。そこで、食品咀嚼中の放散香気量に及ぼす咀嚼頻度の影響を検討することを目的として、咀嚼モデル装置を用いて測定した。方法 抜き型(直径2.7cm)を用いて直径2.5cm、高さ2.5cmに成形した蒟蒻ゼリー(マンナンライフ社製、カップポーションタイプ・レモン味)を0.31Hz、0.71Hz、1.00Hz、1.46Hzの咀嚼頻度にて2分間模擬咀嚼させ、その間に放散した香気をテナックスチューブに捕捉し、加熱脱着式(TSD、Gerstel社)のGC-MS(6890GC-5973MSD、Agilent社)によりリモネンを分析した。実験は6回の平均とし、シェッフェの全群比較法により統計処理を行った。結果 咀嚼頻度1.46Hz(1.46回/秒の咀嚼)は、予備実験にて学生パネルに試料を供試して食べてもらい、計測した嚥下するまでの咀嚼回数と咀嚼秒数から算出した値の最大値である。学生の咀嚼頻度は1.00~1.46Hzの間にあり、これに対して、ややゆっくりの咀嚼を0.71Hz、非常にゆっくりの咀嚼を0.31Hzに設定した。リモネンの放散量は、咀嚼頻度が低くなるにつれて減少する傾向にあったが、1.46Hzと1.00Hzの間には有意差は無く、0.71Hzでは5%、0.31Hzでは1%の危険率で有意に減少した。以上のことから、咀嚼頻度が低い高齢者では、咀嚼中の放散香気量の少ないことが示唆された。
著者
島田 淳子 小竹 佐知子 松本 美鈴 畑江 敬子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.197-203, 1990-03-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

調理操作の中の調味操作が, 押し出し成型したタンパク質を主成分とする組織化製品に及ぼす影響を物性変化の面から検討した.試料はタンパク質含量90.0%, マトリックス構造中に直径0.003~400μmの細孔の分布が認められるもので, 水浸漬を対照とし, ショ糖, 食塩, 醤油, 酢酸および乳酸の0.1~1.0M水溶液に浸漬した結果次のことが明らかになった.(1) ショ糖, 食塩, 醤油水溶液浸漬後の重量増加による保水性は対照に比べ増加したが, 比重を考慮して保水された水溶液の体積をみると, ショ糖は吸水されにくいことが認められた.一方, 酸浸漬によるTSPの保水性は著しく大きかった.(2) かたさは, 保水性同様, ショ糖, 食塩および醤油浸漬試料では対照とほとんど差がなかったが, 酸類では著しく軟化した.(3) 内部構造については, ショ糖, 食塩および醤油浸漬TSPの断面は対照と差がなかったが, 酸浸漬 TSPではマトリックスの様相が著しく変化し, 断面全体に網目構造が発達した.(4) 調味液浸漬後の試料の断面を測定した結果, 吸水膨潤による断面積変化量は保水性を反映する結果であった.
著者
小林 史幸 小竹 佐知子 大久保 恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的:</b>南総里見八犬伝、椿説弓張月等の作者として知られる戯作者・曲亭馬琴(1767-1848年)は、身辺の出来事について詳細な日記をつけていた。その『曲亭馬琴日記』の天保2および3年(1831~32年)の2年間を対象とし、当時の食の状況を知ることを目的にして、特に菓子類について、その種類と用途に注目して文献調査をおこなった。<b>資料:</b>『曲亭馬琴日記』(中央公論社、2009)の天保2年と同3年の本文から菓子の記述を抜き出し、各種菓子の記録数および全体に対する記録数の割合を調べた。その際、種類別と用途別の2種類の方法で集計した。種類別の集計では1種類の菓子の記録1つにつき1回と数え、用途別の集計においては、1つの用途に必要とされる菓子の数を菓子の登場回数とした。また、砂糖については入手頻度と入手量からその使用状況を推測した。<b>結果:</b>日記に登場する菓子類を種類別にみると菓子、餅菓子といった大まかな分類の他、落雁、団子など個々の名称もあわせて25種類の菓子類に関する事柄が記録されていた(天保2年に143回、天保3年に162回の記録)。両年とも最も記録回数が多かったものは餅菓子(38回、55回)であり、正月準備に多種多様な餅を注文したものが多く見られた。次いで多かった砂糖(29回、36回)の場合は、白砂糖、黒砂糖の分類、分量等詳細に記録された日もあったが、砂糖を入手したということのみ記録された日もあった。用途では贈答、供え物、注文品記録、購入品記録等全部で20種に分類できた(169回、193回)。その中では貰い物が最も多く(68回、61回)、その送り主は大家にあたる人物、身内、友人、板元からの物が多数記録されていた。
著者
宇野 良子 小林 史幸 篠原 和子 小竹 佐知子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.2P2OS18a2, 2017

<p>本研究は、米菓の食感認知を、オノマトペに着目した認知言語学的分析により解明する。特に、実際に米菓を食べる場合と想い浮かべるだけの場合(記憶)とで食感表現がずれる可能性とその原因を探る。実験では、実際に米菓を食べるときより、食べる経験を思い浮かべるときの方が同じ米菓がより硬く表現される観察を得た。ここから、食体験と食文化の記憶における拮抗を言葉から解明する手法を提案する。</p>
著者
小竹 佐知子
出版者
山梨県立女子短期大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

粘稠性のある食品のモデル系試料として、0〜15%濃度のデンプンゾル(粘度3.7Pa s以下)および油相体積分率0.3に調製して粘度を変えたエマルション(粘度2.1Pa s以下)を用い、香気成分には油-水間の平衡分散係数K_<ow>と空気-水間の平衡分配係数K_<aw>が大きく異なるdiacety1(K_<ow>=0.3、K_<aw>=1.6×10^<-3>)および2-heptanoe(K_<ow>=52.0、K_<aw>=11.6×10^<-3>)の2種類を、各モデル試料での濃度が0〜20ppm濃度となるように添加した。各試料5mlをパネルに供試して0〜2分間咀嚼させ、咀嚼中の放散香気をテナックスチューブ(2,6-diphenyl-p-phenylene oxide、35/60mesh)に補集し、ガスクロマトグラフィー(Carlo Erba MEGA 5300、検出器 FID、カラムSupelcowax 10(60m×0.25mm i.d.)、温度40℃4分間→95℃(2℃/min)→272℃(6℃/min)、ガス流量He 1ml/min)により放散量を測定した。両香気成分とも咀嚼時間に伴って放散量は増加しており、香気成分の違いによる放散量の違いは従来の報告と同様の傾向であったが、パネルにより放散量は大きく異なっていた(咀嚼2分時diacetyl低粘稠試料最低値300〜最高値800ng、高粘稠試料750〜2250ng、2-heptanone低200〜1750ng、高700〜1900ng)。同事に測定した分泌唾液量にもパネル間において大きな差が認められた(低0.3〜2.0g、高0.4〜2.8g)。これらの違いには男女差や年齢、人種による傾向は認められなかったが、分泌唾液量が多いほど試料媒体の希釈により、香気放散量の少ないことが認められた。
著者
宇野 良子 小林 史幸 篠原 和子 小竹 佐知子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

本研究は、米菓の食感認知を、オノマトペに着目した認知言語学的分析により解明する。特に、実際に米菓を食べる場合と想い浮かべるだけの場合(記憶)とで食感表現がずれる可能性とその原因を探る。実験では、実際に米菓を食べるときより、食べる経験を思い浮かべるときの方が同じ米菓がより硬く表現される観察を得た。ここから、食体験と食文化の記憶における拮抗を言葉から解明する手法を提案する。
著者
小竹 佐知子
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
日本獣医生命科学大学研究報告 (ISSN:03738361)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.70-79, 2006-12-01
被引用文献数
1

『アンネの日記 完全版』に記載された食品の種類と記載割合を調査した結果,総記載食品数は332品であった。これらの食品を食品群に分けた結果,記載割合の多かったのは穀類,イモ類,野菜類であり,いずれもそれぞれ11.7%を占めていた。イモ類は全てジャガイモであり,他の種類のイモは見られなかった。この3群の食品は,いずれも多量に摂取したい食品であったが,一方,隠れ家生活の期間(1942年〜1944年)のこれら3群の消費者物価指数はいずれも上昇しており,品質劣化や不足の様子を頻繁に書くことが記載割合を多くしていた要因と考えられる。肉類,乳類の1942年から1944年までの消費者物価指数は変動がなく,品質劣化や不足の記述はイモ類,野菜類に比べると少なかった。主要栄養への寄与が少ないし好品である菓子類,し好飲料の割合がいずれも9%以上を占めていたが,誕生日プレゼントとして,支援者から贈られるケースが多かった。
著者
小竹 佐知子
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
日本獣医畜産大学研究報告 (ISSN:03738361)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.34-51, 2005-12-01

『アンネの日記 完全版』にみる食物関連事項をその内容から大きく6つのグループ(食糧の所有,食卓の団欒,不公平感,食糧の不足,食糧の腐敗,物価高)に分けた。隠れ家には,隠れ家生活の最後までコンスタントに何らかの食糧が運び込まれていた。しかし,品質劣化は免れず,隠れ家生活の中期以降,アンネは食糧不足・腐敗・物価高をはっきり認識して日記にまで書き起こしていた。また,小さな隠れ家内での3世帯の共同生活には,食糧を分ける際の不公平感を常に感じさせることとなっていた。