- 著者
-
明神 もと子
- 出版者
- 北海道教育大学
- 雑誌
- 釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, pp.143-150, 2005-10-30
幼児期から学童期にかけての子どものごっこ遊びには、後の創造的想像力の芽生えが見られる。本稿では、文献や観察資料によって、ごっこ遊びの具体的な例を分析することによって、想像力の生成と発達について、考察することを目的とする。はじめに、年齢発達に沿って、変化していくごっこ遊びの姿を描写して、幼児期から学童期の想像力の特徴をとらえた。乳児期の大人と子どもの情動的交流によって形成された、対人関係能力を基盤にしながらも、1〜2歳ごろは事物の道具的操作が中心の遊びである。これは大人からの延滞模倣によるものであり、再生的想像力が主に働いている。3歳前後の遊びは事物や人の他のものへの見たてが活発になり、テーマとストーリーのある遊びに発達する。役割を演じることに、ルールがある。3歳からの就学前期はごっこ遊びの全盛期といえる。ことばとイメージを他者と共有できるようになり、ごっこ遊びは今・ここを越える想像力に支えられ、創造性を帯びてくる。つぎに、ごっこ遊びの中で、発達する想像力の性質について考察した。ごっこ遊びは子どもの現実の生活に起源をもっている。子どもは虚構の世界で行為しているが、感情は現実的に体験されている。一方、子どもは虚構すなわちごっこと現実を混同することはなく、ことば使いなどで、区別する工夫が見られる。想像力を働かせ、発達させるごっこ遊びは子どもの精神発達において、重要な役割を果たしている。近年、子どもがごっこ遊びをしなくなったとか、5歳くらいでやめてしまうなどといわれている。科学技術の粋を集めた精巧な玩具や仮想現実を作り出すゲーム遊びの普及によって、子どもたちの遊びに対する動機が変化したと考えられ、想像力の発達に対する影響が懸念される。