著者
永松 敦
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.205-220, 2005-03-22

山の神信仰は日本民俗学にとって長い間、解決できない大きな問題である。柳田国男以後、山の神は祖霊信仰の中核をなす存在として語られ、死後の霊が山に登り山の神となり、それが、盆や正月、或いは、地域の人々の要求に応じて山と里とを往来するものと考えられてきた。しかし、九州山間部の狩猟民俗から山の神を仔細に見ていくと、山の神という言葉そのものは18世紀以後の狩猟作法書中に頻出するようになることが認められ、さらに、これらの作法書は、修験祈祷書として作成されたものであるが、村人の手習い本として数多く書写されるようになり、必ずしも全てが修験文書であるとは言えないことが分かってきた。本稿は、実際の狩猟の解体作法から、山の神がどのように関わり、且つ信仰されているかを観察することにより、山間部の民衆に根付く山の神観というものを浮き彫りにし、そこから山の神信仰の系譜を読み解こうと試みる小研究ノートである。

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