- 著者
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亀田 裕見
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.25-36, 1993-09-30
音韻論的型の体系記述研究を目的とする読み上げ式調査による音調の結果と、実際の談話における音調は必ずしも同じではない。東京語と同じ体系をもつ静岡県清水市方言の名詞のアクセントについて、読み上げ式と談話における音調相の比較をし、そこに見られる上昇位置の相異や、弁別的特徴の破壊について考察した。その結果、当該方言の談話には特定の情意表現と結び付いた4種類の文音調、「標準調」「高起調」「頭高調」「遅れ上がり調」が存在していることが分かった。これらの文音調が担う表現性は、新たに生じた音調形式が在来の音調形式に対して結果的に強調性を持つという相互関係において相対的に付与されるものであると考えられる。