著者
蔡 雅芸 Ya-Yun TSAI
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-46, 1996-09-30

「これ、面白くない?」という疑問文を文末上昇の音調で発話すると、発話時の場面によっては、話者自身の持っている意見に対して聞き手に同意を求める同意要求的疑問文になる。本来なら、このような同意要求的疑問文の音調は、アクセント核を保ちつつ文末のみが上昇する音調であるが、最近は新種の音調の出現も指摘されている。本稿はこの音調について、東京の若者の発話のピッチ曲線によるパターンの確認と分類を行い、更にその機能の考察を試みたものである。
著者
鹿島 英一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-24, 1993-09-30

昨今、日本語へのカタカナの進出振りは留まるところを知らないかのようである。一方、日本語より一足先に国際化した(シンガポールの)華語にも外来語が氾濫している。中国語の比ではない。無論、既存の漢字を転用するわけである。日華両語ともただ置かれた環境に独自に反応しているだけである。だが、外来語の表記 (処理) 法を見る限り、よく似た現象にいろいろぶつかる。本稿ではこの問題を取り上げ、日本語のカタカナと華語の表音文字の異同に関して二つほど論じた。一つは表音文字表の作成の試みであり、もう一つは表記のゆれ方の相違である。前者はカタカナの用字法との対照を基に、当地の実際の文字資料を使って行なった。また、後者では日本語の音のゆれと華語の文字のゆれが、表記体系の中で似た役割を果たしていることを指摘した。
著者
藤原 真理
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.120-131, 1991-09-30

助詞「よ」の下接によって《下品さ》が生じる文には, 文脈的背景としての「話題となる情報の持ち出し方・扱い方の点における話し手の非優位性 (受動性・消極性)」が認められるのに対して, 「よ」に備わった表現性は「述べる情報に関する話し手の聞き手に対する優位性」に深く関わっている。「よ」こよってもたらされる《下品さ》は, このような, 一見, 相反する立場が一文において両立する二重性によりもたらされる。
著者
〓 永湖
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-74, 1994-09-30

従来の談話分析は、研究の対象となりやすい話し手の表現を中心に行われた。本稿では、談話の構造で、聞き手の行動の中に見られる談話を潤滑にするための要素の一つである「相づち」を分析する。その結果、相づちの表現は「聞いているという信号」「理解しているという信号」など六つの機能を持っていることが分かった。また談話の流れの中で果たす相づちの機能に重点をおくことによって、新たな談話の型を見出し得ることを示した。
著者
松崎 寛
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.83-94, 1993-09-30
被引用文献数
1

外来語音韻の定着度は表記の問題と大きく関係する。本稿では17種の辞典類の外来語表記を調査し、ゆれをグラフ化した。その結果、ある拍が外来語音寄りか日本語音寄りかは語によりかなり異なることが数量的に再確認された。音韻認定の問題は語例により結論が大きく左右する。少数の語例から一方的な論を展開するのは危険である。
著者
東ヶ崎 祐一
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.73-83, 1995-09-30

上古漢語のわたり音共起形は, 中古漢語までに変化して解消される。その過程は「主母音の消失」「主母音と韻尾の融合」「韻尾の消失」に分類される。素性構造理論を用いて分析することにより, 変化の過程がOCP (Obligatory Contour Principle) 違反を回避する変化であると説明できることを示した。
著者
室井 努
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.87-98, 1994-09-30

幕末・明治期の河竹黙阿弥の歌舞伎脚本の言語の性格をみるために、「〜ます」の音便等による語形変化を調査した。全般的には旧語形を用いており、南北以来の類型を踏襲しているが、明治期の作品には「なさいます」「下さいます」の使用階層が登場し、その一方で「ございます」の登場が遅れるなど、他の後期江戸語資料でみられるような、各々の変化の時間差を反映した事象も確認できる。
著者
松崎 寛
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.75-86, 1994-09-30

日本語の音配列上の制約は漢語や外来語を受け入れてきた歴史とともに変化してきており、語種区分と出現位置の制約との間には密接なつながりがある。本稿では『分類語彙表』収録語3万語の定量的データをもとに和語・漢語の音配列規則を検証するとともに、新たに生じつつある外来語の音配列規則について考察する。
著者
李 香蘭
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-24, 1992-09-30

辞書の記載による外来語のアクセント型を拍数別に調査し, その特徴を明らかにした。2・3拍語では原則からはずれた例は少なく, 頭高型が大部分をしめている。4拍以上の語には, -3拍目に特殊拍やアクセント核を前にずらす音韻的な要因が含まれている語か多いため, -4型や-5型が多く現れている。4拍語は, 日常生活によく使われている語や縮約された形の語が多いため, 平板型が目立つ。5拍語以上では, 外国語の意識がはたらいて原語に多い第1音節にアクセントを置く傾向が見られる。複合語アクセントは, 原則とほぼ一致しているか, 後部要素が2拍語の場合は一定したアクセント型は見られない。平板型特殊拍アクセント核をずらす要因複合語アクセント
著者
近藤 清兄
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.80-91, 1991-09-30

韓国人留学生の日本語には様々な癖が見てとれる。漢字音・漢字語についてこれを見たとき, 複数の誤りが重なりあうことによって聞き手の了解を著しく妨害しうるとの教訓を得る。本論文では誤りのタイプを詳細に分類し, 具体例の観察を通じて日本語教育の場での対処法をも考えていこうとする。
著者
三島 敦子
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-104, 1996-09-30

仙台市立国見小学校の国際教室におけるフィールドワークを通し、外国人児童にとって理解しにくい「学習言語」を調査した。漢字や片仮名が読めないことが教科学習の大きな障壁になることがわかった。教科書の中に何度も出ている語でも理解できない語があった。教科書にルビをつける、片仮名を指導する、「学習言語」を指導するなどの支援が考えられる。
著者
鹿島 英一
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-24, 1993-09-30

昨今、日本語へのカタカナの進出振りは留まるところを知らないかのようである。一方、日本語より一足先に国際化した(シンガポールの)華語にも外来語が氾濫している。中国語の比ではない。無論、既存の漢字を転用するわけである。日華両語ともただ置かれた環境に独自に反応しているだけである。だが、外来語の表記 (処理) 法を見る限り、よく似た現象にいろいろぶつかる。本稿ではこの問題を取り上げ、日本語のカタカナと華語の表音文字の異同に関して二つほど論じた。一つは表音文字表の作成の試みであり、もう一つは表記のゆれ方の相違である。前者はカタカナの用字法との対照を基に、当地の実際の文字資料を使って行なった。また、後者では日本語の音のゆれと華語の文字のゆれが、表記体系の中で似た役割を果たしていることを指摘した。
著者
李 香蘭
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.13-24, 1992-09-30

辞書の記載による外来語のアクセント型を拍数別に調査し, その特徴を明らかにした。2・3拍語では原則からはずれた例は少なく, 頭高型が大部分をしめている。4拍以上の語には, -3拍目に特殊拍やアクセント核を前にずらす音韻的な要因が含まれている語か多いため, -4型や-5型が多く現れている。4拍語は, 日常生活によく使われている語や縮約された形の語が多いため, 平板型が目立つ。5拍語以上では, 外国語の意識がはたらいて原語に多い第1音節にアクセントを置く傾向が見られる。複合語アクセントは, 原則とほぼ一致しているか, 後部要素が2拍語の場合は一定したアクセント型は見られない。
著者
藤原 真理
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.120-131, 1991-09-30

助詞「よ」の下接によって《下品さ》が生じる文には, 文脈的背景としての「話題となる情報の持ち出し方・扱い方の点における話し手の非優位性 (受動性・消極性)」が認められるのに対して, 「よ」に備わった表現性は「述べる情報に関する話し手の聞き手に対する優位性」に深く関わっている。「よ」こよってもたらされる《下品さ》は, このような, 一見, 相反する立場が一文において両立する二重性によりもたらされる。
著者
蔡 雅芸 Ya-Yun TSAI
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
no.5, pp.25-36, 1995-09-30

東京語における「動詞未然形+ウ・ヨウ」と「動詞連用形+マショウ」は同じ文法「意志」と「勧誘」との二つの意味を表すことができる。この二つの表現ではアクセント核は元来後ろから二拍目のところにあるが、最近、特に若い女性の場合にアクセント核が消失した上昇調のイントネーションがよく聞かれる。この現象については、先行研究が「浮き上がり調」と名付けた。本研究は東京語の意志表現と勧誘表現のイントネーションがアクセント核を保ったままであるか、アクセント核が消失した「浮き上がり調」であるかどうかについて、気分による相違や男女差、年齢差との関連などを考察する。浮き上がり調ピッチパターン心理的事情
著者
東ヶ崎 祐一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.61-70, 1993-09-30

万葉仮名の音表記と、中古漢字音との間には、一定の対応関係があるが、それにはずれる例も散見する。本稿ではそういった例のうちの一つである、エ列甲類を示すはずの「斉韻字」の一部がエ列乙類の表記に用いられる問題に焦点をあわせ、これが例外ではなく、もともとエ列乙類に用いられていたのが、漢字音自体の変化によりエ列甲類を示すようになったものであることを論じる。
著者
亀田 裕見
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.25-36, 1993-09-30

音韻論的型の体系記述研究を目的とする読み上げ式調査による音調の結果と、実際の談話における音調は必ずしも同じではない。東京語と同じ体系をもつ静岡県清水市方言の名詞のアクセントについて、読み上げ式と談話における音調相の比較をし、そこに見られる上昇位置の相異や、弁別的特徴の破壊について考察した。その結果、当該方言の談話には特定の情意表現と結び付いた4種類の文音調、「標準調」「高起調」「頭高調」「遅れ上がり調」が存在していることが分かった。これらの文音調が担う表現性は、新たに生じた音調形式が在来の音調形式に対して結果的に強調性を持つという相互関係において相対的に付与されるものであると考えられる。
著者
鈴木 直枝
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.128-118, 1996-09-30

本稿では、古代から現代に至るまでの <ガラス> を表す語の用語法を明らかにし、その歴史的変遷を、「対外文化史」的観点から明らかにすることを試みた。まず仏典からの「ルリ」「ハリ」の語がみられ、次にポルトガル語から「ビイドロ」、オランダ語の「ギヤマン」が、続いて「ガラス」「グラス」が移入される。これらの指示内容は、移入時の状況によって異なっており、対外文化史との関わりをみることができる。
著者
郭 常義
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.25-37, 1991-09-30

希望の助動詞「たい」による希望表現には, 人称制限と制限解除との場合があるが, その実態と原因について従来の研究では単文を中心に分析されてきたが, 本研究は日本語教育の立場から従来の研究を踏まえて, 複文を主にして検討し, 「たい」形式の希望表現の人称制限が解除されるかどうかは, 「希望」が現時点の事実であるかどうかによるという結論を提出した。
著者
藤原 真理
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.71-82, 1993-09-30

本研究は、「そう」という形式を含む相づち表現「そう」「そうだ・そうです」「そうですか」「そうですね」を中心に、その用法を分析することによって、相づちによって表現される話し手の立場・態度の様相の一端を示したものである。「そう」系の相づち表現は、その用法上、話題・情報に対して話し手が積極的に「同意」を表明する場合と、情報の「受容」の表明にとどまる場合との、二つに大別される。それらは共起する感動詞によって、「感心」「思案・納得」「気づき・驚き」「肯定」など、さまざまな副次的な表現意図と合せて表出される場合がある。そのうち「思案・納得」「気づき・驚き」は、「受容」「同意」のどちらとも共存可能であるが、「感心」は「受容」とのみ、「肯定」は「同意」とのみ共存する。こうした分析から、相づち表現の意味構造が幾つかの層の表現意図からなる、重層的なものであることが予想される。