著者
村澤 和多里
出版者
作新学院大学
雑誌
作新学院大学人間文化学部紀要 (ISSN:13480626)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-15, 2005-03-23

E.H.エリクソンのアイデンティティ論は、1950年代のアメリカにおいて、既存の社会に対して反抗的な「青年文化」を理解する枠組みとして生み出され、1970年代には日本においても青年心理学の基礎に位置づけられた。しかしながら、1980年代にはいるとエリクソンの理論は急に色あせたものとなり、論壇からは「退場」していった。現代、「ひきこもり」などの青年期の問題について理解・援助していく上で心理と社会を包括的にとらえるパラダイムが必要であると思われるが、エリクソンに代わるものはいまだに登場していない。本論文ではあらたなるパラダイムの可能性を探る第一歩として、エリクソンのアイデンティティ論について概観し、また相対化することを目的として、社会学者P.L.バーガーのアイデンティティ論と比較検討した。エリクソンの理論の限界としては時代的コンテクストを相対化する視点を持ち得なかった点を、バーガーの理論の限界としては結果的に人間から社会への働きかけの可能性が示されていない点を指摘し、新たな理論への可能性としてエリクソンにおけるアクチュアリティの概念に注目した。

言及状況

はてなブックマーク (1 users, 1 posts)

[社会病理][競争社会の害][経済][若者][若者医療][貧困層][福祉][メンタルヘルス][ストレス]

収集済み URL リスト