- 著者
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上村 佐知子
下田 裕子
近藤 直樹
津曲 良子
佐々木 誠
- 出版者
- 秋田大学
- 雑誌
- 秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.52-57, 2005-03-31
本研究の目的は,身体活動能力の低下を伴う痴呆患者における愛他的行動の出現頻度や出現内容を観察するとともに,愛他的行動の出現が痴呆の重症度・症状類型やセルフケアの自立度と関連するかを明らかにすることである.一般総合病院で理学療法を受けている入院痴呆患者39名を対象に,1ヶ月間の愛他的行動の出現を観察し,また,改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)と高齢者用多元観察尺度(以下MOSES)を用いて,痴呆の重症度と社会活動性を評価した.愛他的行動の出現頻度は1〜45回,1回も出現しなかった患者は2名であり,総数では605回の愛他的行動が観察された.愛他的行動の出現頻度は,HDS-Rとの間に相関関係を認めなかったが,MOSESの総点との間に有意な相関関係を認めた.愛他的行動の出現頻度に最も影響するMOSESの下位尺度は「引きこもり」と「イライラ感」であった.結果より,痴呆患者においても少なからず愛他的行動が残存し,それは引きこもりやイライラ感が少ない者で多く観察されることが示された.