- 著者
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立平 進
- 出版者
- 長崎国際大学
- 雑誌
- 長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.37-44, 2005
筆者は、「海を旅する人たち」のテーマで、いくつかの論考を記してきた。海を旅する人たちとは、決して楽な旅ではなく、旅の経緯が比較的不明なものが多く、名も無き人々や、記録に残らないような人たちの旅を記してきたつもりである。漁民は、その中心的な存在であるといえる。本稿では、瀬戸内海漁民の移動について、山口県熊毛郡平尾町佐合島の漁民が、対馬の峰町志多賀に出漁してきていたことを記したものであるが、これを聞き取り調査で明らかにすることができたため、漁民の移動の軌跡として記録したものである。近代になって、瀬戸内海漁民が長崎県の近海に出漁してくる経緯について、江戸時代からの歴史的な経緯もあったが、対馬に「各地ノ漁夫群来シテ種々ノ漁業ヲ営メリ」(下啓介、本文注2)と記されるように、遠くから好漁場であった西海地域に各地の漁師が出漁してくる背景についても考察したものである。また、長崎県の漁民が離島へ出漁していく経緯について、民俗学的な調査により明らかにされたものを、旅の歴史・庶民の交流の歴史として提示したものである。