著者
枝松 秀雄
出版者
東邦大学
雑誌
東邦醫學會雜誌 (ISSN:00408670)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.290-295, 2005-09-01

人工内耳は,両耳とも聾のために補聴器では全く音感が得られないような患者の内耳の蝸牛内に第8神経を電気刺激する電極を埋め込む手術と,手術後の言語聴取のためのリハビリテーションから構成され,聴覚機能の回復と社会復帰を目指す一連のチーム医療である。人工材料の埋め込みによる感覚機能の回復を目指す医療のなかでも,人工内耳は既に世界でも日本でも症例数の多さから,安定した良好な成績の医療として高く評価されている。手術前には,筆談によるコミュニケーションしかできない患者のなかには,手術後にリハビリを受けて聴覚機能を取り戻し,外来予約も自分で電話できるようになる,あるいは音楽会にも出かけられる症例も存在する。高度難聴の患者は社会的にも経済的にも弱者であるため,人工内耳による聴力回復は唯一の福音である。人工内耳は耳鼻科の高度先進医療として開始されたが,保険認可された現在でも施設認可のために各都道府県に申請を行う。その認可基準には,年間の耳科手術数,常勤医数,人工内耳経験医,言語療法のためのスタッフなどが必要とされる。東邦大学医療センター大森病院耳鼻咽喉科は,2005年2月に人工内耳の施設認可を受けた。今後は,城南地区の基幹病院として高度難聴症例に人工内耳治療を積極的に行っていかなければならない。

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編集者: Was a bee
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