- 著者
-
佐々木 英和
- 出版者
- 宇都宮大学
- 雑誌
- 宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
- 巻号頁・発行日
- no.28, pp.341-350, 2005-04-01
教育を「教えること」に還元する形で定義してしまうような固定観念は、教育実践にとって必ずしも有益ではない。というのは、教育関係の原点である「教える-学ぶ」関係は、相互に間接的な関係であるのみならず、偶然性にも満ちた関係だからである。それゆえに、この関係は、「教える-教わる」の小さな循環に閉じこめる方向にではなく、「生きる-学ぶ」の大きな循環へと開いていく方向で理解せざるをえない。その上で、非常に複雑な「教わる-学ぶ」関係の可能性を探っていくと、教育について「学び」を起点に置いて組み替えてみれば、それを「教え育てること」と「教わらないがゆえに育まれるもの」とを絶妙に組み合わせながら、学ぶ側の「自ら学ぶ」営みを支援する営為だと定義づけることにこそ、その実践的意義を見出すことができるのである。