著者
渡邊 弘 駒場 一博
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
no.30, pp.105-113, 2007-07-01

明治後期の改正教育令(明治13年)の公布以来、わが国の学校教育において筆頭教科であった修身科の授業は、1945年(昭和20)12月31日に連合国軍総司令部(GHQ)によって出された四大指令の一つ「修身、日本歴史及ビ地理停止ニ関スル件」によって停止された。これに先立ち、同年11月、文部省に公民教育刷新委員会が設けられて、道徳教育にかかわる自主的改革の歩みが起こされており、「道徳と知識との結合」を重視した新しい公民教育が構想されていた。だが、占領軍の指導の下で、翌1947年(昭和22)年度以降、新学制のもとで社会科に移行した。このことは、その後の社会科と道徳教育との関係を不明瞭のものとする結果を招いたと考えられる。当時、このように十分な検討がされたとは必ずしも言えず、曖昧なまま玉虫色のまま終息した特徴的な議論の一つが、ここで取り上げる「教育勅語」(正式には「教育ニ関スル勅語」)廃止の問題である。とくに本論では、公民教育刷新委員会と教育刷新委員会において行われたこの「教育勅語」をめぐる論争を中心に考察する。
著者
佐々木 英和
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
no.28, pp.341-350, 2005-04-01

教育を「教えること」に還元する形で定義してしまうような固定観念は、教育実践にとって必ずしも有益ではない。というのは、教育関係の原点である「教える-学ぶ」関係は、相互に間接的な関係であるのみならず、偶然性にも満ちた関係だからである。それゆえに、この関係は、「教える-教わる」の小さな循環に閉じこめる方向にではなく、「生きる-学ぶ」の大きな循環へと開いていく方向で理解せざるをえない。その上で、非常に複雑な「教わる-学ぶ」関係の可能性を探っていくと、教育について「学び」を起点に置いて組み替えてみれば、それを「教え育てること」と「教わらないがゆえに育まれるもの」とを絶妙に組み合わせながら、学ぶ側の「自ら学ぶ」営みを支援する営為だと定義づけることにこそ、その実践的意義を見出すことができるのである。
著者
坂本 弘志 古平 真一郎 石島 隆志 山本 利一 鈴木 道義 針谷 安男
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
no.30, pp.529-538, 2007-07-01
被引用文献数
1

中等教育における『技術・家庭科』の技術分野(以下:技術科)は,産業社会への橋渡し役を担う教科である.そして,近年,子どもたちの科学技術離れが叫ばれ,新卒者の3年以内の離職率が35%にも及ぶなどの状況の中,技術科は,キャリア教育としての側面や,持続可能な成長につながる人間性の育成にも多大の寄与をするものとして期待がかけられている.本研究は,技術科教育を通して,今後の社会の中でも夢の実現に向け大きな課題に立ち向かっていける人材の育成を最終目標とする.そして,ものづくり企業等で急速に広がっているPDCAサイクルを教育的見地から分析し,その中から,持続可能な成長につながる人間力を育むために必要と考えられる複数の力を抽出した.それらの力を本研究で定義する『学習マネジメント能力』と,これまで提唱されてきている『生きる力』との2つに分類し,それらを育成するための題材の一例として,ロボットコンテスト(以下:ロボコン)製作題材をモデルとしたループ・スパイラル型の学習プログラムを提案する.