48 0 0 0 IR 公共心と愛国心

著者
中村 清
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.215-226, 2003-04-01

教育改革の一視点として公共心と愛国心の育成があげられることが多い。たしかに、最近の若者の利己主義の傾向を考えれば、公共心の育成は重要である。しかし、これを安易に愛国心と結びつけることは危険である。愛国心は、ともすれば国家単位での集団的利己主義に陥るからである。本来の公共心は、特定の人間集団を越えて人間一般に貢献する精神である。愛国心も、この意味での公共心の具体例となる必要がある。
著者
渡邊 弘 駒場 一博
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
no.30, pp.105-113, 2007-07-01

明治後期の改正教育令(明治13年)の公布以来、わが国の学校教育において筆頭教科であった修身科の授業は、1945年(昭和20)12月31日に連合国軍総司令部(GHQ)によって出された四大指令の一つ「修身、日本歴史及ビ地理停止ニ関スル件」によって停止された。これに先立ち、同年11月、文部省に公民教育刷新委員会が設けられて、道徳教育にかかわる自主的改革の歩みが起こされており、「道徳と知識との結合」を重視した新しい公民教育が構想されていた。だが、占領軍の指導の下で、翌1947年(昭和22)年度以降、新学制のもとで社会科に移行した。このことは、その後の社会科と道徳教育との関係を不明瞭のものとする結果を招いたと考えられる。当時、このように十分な検討がされたとは必ずしも言えず、曖昧なまま玉虫色のまま終息した特徴的な議論の一つが、ここで取り上げる「教育勅語」(正式には「教育ニ関スル勅語」)廃止の問題である。とくに本論では、公民教育刷新委員会と教育刷新委員会において行われたこの「教育勅語」をめぐる論争を中心に考察する。
著者
陣内 雄次 玉虫 彰一郎 上田 由美子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.317-326, 2007-07-01

第一報に続き、宇都宮市におけるまちづくりへの子ども参画を進める上での課題を明らかにするために、様々な調査・分析を行った。昨年度からの結果を合わせると、子ども参画について未だ大人の側のコンセンサスが十分でないこと、現場で子どもたちを支援する大人が不足していること、様々な地域での子ども参画についての経験知が共有されていないこと等が明らかになり、今後の子ども参画推進へ向けて、具体的な施策展開をしていく上で多くのヒントが得られた。
著者
中村 清
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.153-164, 2005-04-01

近年の教育改革論では、公教育において国民としての自覚を育成するために、我が国の伝統的文化を確実に教えることが必要であるといわれることが多い。公教育において国民諸個人に国家の形成者としての自覚を育成することは大切である。しかし、国民としての自覚が人類の一員としての自覚と両立するためには、特定の国家に伝統的な文化ではなく、人間にとって普遍的な価値を有する文化を教えるのでなければならない。小論は、伝統的な文化を教えることの難点を示すとともに、普遍的な文化を教えることの可能性を示すことによって、この原則の妥当性を確認した。
著者
柳田 多寿 大森 玲子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.351-360, 2007-07-01

平成17年7月に施行された「食育基本法」では、(1)食に関する知識、(2)食を選択する力、(3)健全な食生活を実践する態度の3項目を育成することが目的とされ、なかでも食育の対象として子供に焦点がおかれている。本研究では、食に関心を持ち、将来にわたり正しい食の選択ができる児童を育成するための方策について、食生活実態調査に基づき、検討した。宇都宮市内4校で実施した児童の食生活実態調査の結果、朝食およびおやつの摂取状況、野菜嫌いな児童の割合において、地域差が認められた。都心部の児童に野菜嫌いが多かったことから、野菜を用いた献立による栄養教育および調理実習を実施し、その実践的効果を検証した。その結果、食に関する知識を示し、栽培から調理までを通した食育は偏食を改善する上で効果的であると思われた。また、食生活実態調査から、おやつによる糖分および油分の摂取過多が懸念されたため、校内におやつ掲示板を設置し、児童がおやつを適切に選択できるよう、知識や情報を提供した。さらに、児童が望ましい食生活を送る上で、家族の関わりは重要である。学校と家庭が連携して食育に取り組むために、調査結果の公表や保護者への啓発活動の手段として、学校ホームページに「早寝早起き朝ごはん」サイトを構築し、食に関する情報を発信した。
著者
川原 誠司 増渕 裕美 星 奈見
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.11-22, 2004-04-01

2003年8月〜2004年3月にかけて,宇都宮大学教育学部附属教育実践総合センター教育臨床研究部門臨床心理研究分野で実施した,集団プログラムならびに個別プログラムについての報告である。8月の夏季プログラム開始時は9名の参加者であったが,最終的に年度末の卒業式まで継続出席できたのは3名であった。本稿では,集団プログラムと個別プログラムの概要を述べ,中途でやめていった子どもの様子を中心に,留意しなければならない参加者側の要因をいくつかに分けて詳細に検討し,次年度以降プログラム運営を行う際に,受け入れ側である筆者らスタッフが考慮しなければならないことを考察する。
著者
中島 宏和 小堀 志津子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.453-462, 2007-07-01

カエル調査の活動への参加者を地域の児童・生徒及びその保護者から募集し、地域社会で行う環境学習のあり方について検討した。分布調査や観察会、学習会を行った後、学習の成果を発表する場としてシンポジウムを開催した。その結果、子どもも大人も今回の活動が、改めて自然を見つめ直すきっかけとなったり、世代を超えた新たな人間関係の構築につながる様子が伺えた。また、活動に参加した児童は、参加しなかった児童に比べ、生物と生物や生物と自然環境とのつながりなど、環境を幅広くとらえていることが分かった。
著者
佐々木 英和
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
no.28, pp.341-350, 2005-04-01

教育を「教えること」に還元する形で定義してしまうような固定観念は、教育実践にとって必ずしも有益ではない。というのは、教育関係の原点である「教える-学ぶ」関係は、相互に間接的な関係であるのみならず、偶然性にも満ちた関係だからである。それゆえに、この関係は、「教える-教わる」の小さな循環に閉じこめる方向にではなく、「生きる-学ぶ」の大きな循環へと開いていく方向で理解せざるをえない。その上で、非常に複雑な「教わる-学ぶ」関係の可能性を探っていくと、教育について「学び」を起点に置いて組み替えてみれば、それを「教え育てること」と「教わらないがゆえに育まれるもの」とを絶妙に組み合わせながら、学ぶ側の「自ら学ぶ」営みを支援する営為だと定義づけることにこそ、その実践的意義を見出すことができるのである。
著者
堀江 尚志 石川 賢 川島 芳昭 内野 康人之
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-10, 2003-04-01

総合的な学習の時間において,小学校5年生を対象に家庭排水と環境を課題とする学習指導を行った。この学習活動は,家庭雑排水の実験データをもとに環境への影響を考察することを目的とした。そこで,家庭雑排水の実験データの処理と考察を支援するWebページ形式の教材を開発した。本教材では,実験データの学習者間の共有,一覧表やグラフの作成,河川の様子の視覚化,日常生活の点検結果の点数化により,学習活動を文援した。その効果を検証するために,本教材を利用した実験群と,配付資料や黒板を用いた統制群を設定し,実験授業を行った。その結果,認知面では全体として実験群と統制群に有意差は見られなかった。一方,情意面では「データをわかりやすくまとめられた」や,「日常生活と自然環境との関連がわかった」など,本教材を用いた実験群で良好な回答が多いことが分かった。
著者
真下 弘征 関口 絵美
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.403-413, 2004-04-01

本稿は、現代日本という大量ごみ社会をどのように改革しごみゼロ化社会にしていくかということを教育課題として取り組む一作業である。まず第一に取り組むのは、RDFについてどのように究明し、教材化するかである。大量廃棄物生産社会の現状とその根本原因を見つめ、また、RDFの現状の考察を通して、真のゼロエミッション社会へと導く方策と、教育課題は何かを考察する。さしあたり、RDFの運営に関する諸問題の分析から、今後のゴミゼロ化社会のあり方を探る。RDF運営各プロセスには多くの矛盾と問題が存在するが、しかし、国民に幾多の誤解を与えている現状は看過できない。RDFの矛盾点、問題点のことは小・中・高・大学の教育にまだ殆ど取り入れられておらず、大量浪費・ごみ増量社会の温存教育は継続している。教育の面からの打開が必要である。
著者
黒後 洋 藤田 直
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.389-398, 2007-07-01

文部科学省より平成12年9月に策定された「スポーツ振興基本計画」では、「2010年までに、全国の各市町村において少なくとも1つは総合型地域スポーツクラブを育成する」という指針を提示した。栃木県内における総合型地域スポーツクラブの創設は、平成15年度以降徐々に増加傾向を示し、日本体育協会のクラブ育成推進事業等を基盤に各市町における積極的な取り組みが伸張しつつある。しかしながら、クラブ創設・育成に関しては自主財源、施設・指導者の確保等、様々な問題を抱えているのが現状である。そこで本稿では栃木県内における総合型地域スポーツクラブの現状を分析しその課題について再検討を行った。その結果、創設・育成に関する今後の課題として、広域スポーツセンターの機能拡充、未設置市町への具体的方策の策定。また、スポーツ指導者の確保、クラブマネージャーの育成に関する有資格化、さらにスポーツ振興のシンボルとして栃木SCを中心としたプロスポーツクラブとの連携を企図すること等が示唆された。
著者
伊東 明彦 千田 恵 田原 博人
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.473-482, 2007-07-01
被引用文献数
2

教員養成系学部の大学生を対象として,1976年に実施した「天文基本調査」とほぼ同じ調査を2006年に実施し,大学生の天文に関する知識が30年間にどのように変化したのかを検討した.その結果,月の満ち欠け,太陽光のあたり方の季節変化など,ほとんどすべての調査項目について,大学生の知識は有意に低下していることが明らかとなった.また,自由記述式の設問の回答を分析した結果,月の満ち欠けが,月,地球,太陽の相対的な位置に関係すると考えている学生は40%程度であり,月の満ち欠けの仕組みを正しく説明できた学生は約10%に過ぎないことも分かった.
著者
陣内 雄次 石崎 純子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.79-85, 2003-04-01

第二次世界大戦後の欧米文化輸入に際して、子どもの自立を促すとして日本の家屋にも多く取り入れられた子ども部屋は、1980年代に入り子どもの犯罪における子ども部屋の悪影響がクローズアップされたことなどをきっかけに、犯罪の要因になるとして批判論が強まった。本研究では、栃木県上三川町および小山市における子ども部屋の使用状況と意識について調査を行い、子ども部屋の家庭と家族関係に及ぼす影響について分析した。
著者
大森 玲子 山崎 久子 飯田 有美 岩原 祐子 永山 ケヱ子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.361-368, 2007-07-01
被引用文献数
4

近年、子どもを取り巻く食環境が変化し、食をめぐる問題が顕在化している。児童生徒の食の問題には乳幼児期からの食習慣が深く関連することから、食の自立能力の基礎を形成する乳幼児期の食育を推進し、望ましい食習慣を体得させることが大切である。本研究では、乳幼児期の食育を実践する上での基礎資料とすべく、保育園児を対象とした食生活等実態調査を行った。調査の分析結果から、「朝食を毎日必ず食べる」子どもは89%であった。朝食メニューをみると、主食が米飯である場合、74%が副食(主菜and/or副菜)を添えるのに対し、パンである場合28%であった。朝食を「ひとりで食べる」子どもも16%おり、このうち78%が祖父母と日常的に食事をする機会のない子どもであった。降園後夕食までの間に46%がおやつを食べ、その内容は「スナック菓子」(55%)、「果物」(30%)の順であった。また、行事食に関して、「しもつかれ」を作る家庭の80%が祖父母と-緒に食事をしていることがわかった。本研究より、子どもの食生活の実態が、子どもを取り巻く家庭の食事環境にも影響を受けていることが明らかとなった。よって、子どもに対し食育を実践するだけでなく、親への啓発活動も必要であることが示唆された。