著者
林 光
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.239-272, 2004-03-19

内戦に関与した指導者や兵士連は,内戦終結と同時に収奪機会や権力の喪失,戦争犯罪での訴追等のリスクにさらされる.このため彼らは自己保身から意図的に内戦を継続する動機を持つ.この場合たとえ秩序回復が容易であるはずの事例においても内戦は終結しにくくなり,分析におけるセレクション・バイアスを生む.本研究は,ヘックマン(Heckman)流の二段階の統計手法によってこのバイアスを補正し,国連の介入や政治体制等が与える影響について新たな知見を導いた.すなわち,国連の介入は紛争終結には有効ではないが,秩序回復には非常に有効であった.一方,国連以外の介入は逆の傾向が認められた.その他,窮地に追い込まれた政治指導者は起死回生を図ってハイリスク・ハイリターンな政策を追求しがちであるという「起死回生のギャンブル」仮説,資源収奪の誘因に注目した「強欲」仮説等も支持された.以上の分析に基づいて秩序回復の確率に関する予測も試みた.

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