- 著者
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パント モハン
布野 修司
- 出版者
- 日本建築学会
- 雑誌
- 日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.543, pp.177-185, 2001
- 被引用文献数
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本稿は、ネパール、カトゥマンズ盆地の都市ティミを対象として、その街区組織のあり方を解明することを目的としている。カトゥマンズ盆地には三つの古都、カトゥマンズ、パタン、バクタプルをはじめとして極めて秩序だった都市、集落の形態を見ることが出来る。特にネワールの人々は古くから都市的集住のかたちを発達させてきたことで知られる。カトゥマンズ、パタン、バクタプルについては様々な研究者が着目してきた。著者も、パタンについてこれまでその原初的街区形態に関して考察を重ねてきている。本稿でティミを取り上げたのは、三つの古都の間にあって、比較的単純な構成をしていることが大きな理由である。すなわち、ティミにおいて、より明快に街区組織の原型が明らかに出来るのではないか、というねらいがある。本稿では、現地調査をもとにして、デシャ、トル、ナニ、チェンというティミの街区組織の段階構成について、その特質について考察した。まず、ティミ全体の空間構造を記述した上で、チャパリ・チェンを例として取り上げ、その構成について考察した。大きな指標としたのはクシェトラパラと呼ばれるナニの入口に置かれる丸石である。そして、テイミ全体に関する調査をもとにナニの形態が三つに類型化されることを明らかにした。さらに続いてティミ全体について各類型の分布を示した。本稿における街区組織の三類型の解明によって、カトマンズ盆地の都市空間構成を原理的に解明する大きな手がかりが得られたと考える。