- 著者
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本多 〓
- 出版者
- 社団法人日本造園学会
- 雑誌
- 造園雑誌 (ISSN:03877248)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.3, pp.19-24, 1968-12-29
公園緑地の存在によつて、大気汚染とくに煤塵に対して、その遮断効果または捕捉効果を把握するために、都心部にある大緑地として皇居内及び皇居外苑について、その外囲より内部に至る樹木の築上に附着する煤塵量の推移と、その附着のの状況について調査測定を行つた。(1)皇居外苑に比べて、坂下門内宮内庁舎前では1/6に減少し、その内部の乾道では1/41に、最も内部の吹上御苑の中では実に1/40に減少し、緑地の存在による煤塵防止効果は顕著であつた。それは緑地のもつ空間のひろがりに由来する効果と、その上に存在する樹木群の防波堤としての機能の相乗的なあらわれであると考えられる。(2)葉面気孔閉塞度よりみれば、外苑のクロマツの葉は、平均80%以上の気孔が閉塞されていたが、それより1km以上内部に位置する吹上御苑の中では、全く閉塞されないかまたは極めて僅少にとどまつた。(3)本年生葉に比べて前年生葉は場所により約3割増より3倍以上多く附着し、気孔閉塞度においても同様の傾向を示した。(4)クロマツの葉面で最も煤塵の附着しやすいのは、葉緑の極めて微細な鋸歯のある部分で、湾曲面、平坦面では粗に附着している。1本の葉上では葉の先端より中央部にかけて多く、基部に行くに従つて粗になる。(5)大雨直後にも葉上の煤塵はかなり残存するので、樹木の生育悪化を防ぐためには、自然の降雨のみによらず、煤塵の固着化の進まないうちに度々洗滌を行うことが望ましい。