著者
本多 〓
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.73-91, 1972-12-25

1.植栽による遮音施設の開発のために,その基礎研究として緑地の防音機能について各種の調査と実験とを行った.2.実態調査は東京都内の大緑地について,指示騒音計,高速度レベルレコーダーを用いて音の分布を測定し,なお重要な地点では24時間測定を行った.実験には,125, 250, 500, 1,000, 2,000, 4,000, 8,000の各周波数毎に音を発生させ,各種条件下の樹木を通過させてその減衰度を調べた.3.大緑地(明治神宮境内)の実側で常時発生している80ホン前後の騒音が,森の中央部では40ホン前後となり,また季節的にみれば,夏季には45ホン以下の静穏地域が最大に拡がり,冬季にはその面積が縮少することよりみて,樹木の存在が遮音に役立ち,また樹葉が防音に大きく関与していることが認められた.4.同一樹種が100m以上連続する樹林での実験によれば,高い周波数帯の音ほどカットされやすく,その減衰曲線は急カーブとなる.5.アベリア(Abelia grandiflora)では,1,000Hzにおいて100ホン前後の音を70ホンに低下させるために,植栽のない場合(アスファルト舗装)60mを要したが,林の中では17mで足りた.6.各種の生垣の遮音効果試験によれば,樹種や周波数により影響を受けるが,例えば2,000Hzの音が,アオキ(Aucuba japonica)の厚さ35cmの生垣を通過すると,4.6ホンの低下がみられた.7.コンクリートなどの壁体の反射音に対する植栽の効果をみると,樹種と植栽の厚味によって異るが,例えばカイズカイブキ(Juniperus chinensis var. kaizuka)の4列植では,1,000Hzの音では2.2ホン,8,000Hzの音では5.9ホンそれぞれ低下した.8.交通騒音に対する実態調査では,道路は周辺地域と同一レベルにある場合よりも,高いか低い場合に周辺地域における音の減衰度は大きい.9.道路際に設けられた高さ1mの土塁上に,草丈約1mの密生したススキ(Miscanthus sinensis),ヨモギ(Artemisia vulgaris var. indica),クズ(Pueraria hirsuta)などの草木またはつる性樹の植生が加わる程度でも,その背後では10ホン前後の低下がみられた.10.道路際で80ホン前後の騒音を,環境基準に準拠して50ホン前後に低下させるためには,大面積の緑地を設ければもちろん可能であるが,そのための幅を多くとれない場合には,まず道路を周辺地域より低くし(切通し道路),その法肩(斜面上端)に小土塁,コンクリート塀などの構造物と植栽とを組合せた複合施設を施せば,30ホン前後の騒音の減衰を得ることば困難ではない.
著者
本多 〓
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.91-98, 1974-03-15

1.都市樹木の公害抵抗性を増進するための管理技術開発の一環として,施肥による効果について実験を行った.2.供試樹木はケヤキZelkova serrata MAKINOで用土は肥料のほとんどない心土の赤土を用い,所定の施肥を行った後,1972年7月13日に木箱に植付けた.3.実験区は,多肥区・中肥区・少肥区・無肥区の4区を設け5連制で行った.植付けどきに化成肥料を元肥として施し,追肥は行わなかった.4.SO_2処理には,人工気象室より成るガスチェンバーを用い,樹木が活着し,肥料吸収の時間として1ヵ月および2ヵ月を経過した後に行った(2.5ppm,2時間).5.煙斑発生率よりみると,施肥区が無肥区に比べて被害は少なかった.1ヵ月では各区の差はあまり多くはなかったが,肥料の吸収利用が多くなったと考えられる2ヵ月後の実験においては,各区の差は大きく,中肥と多肥の区では無肥区の約1/3に減少した.6.落葉率よりみると,多肥区は少く,無肥区を100とすると多肥区では約40%にとどまった.7.SO_2接触24時間後に摘葉を行い,その後の再生展葉状態を調べたところ,肥料の少い区ほど再生力が乏しく,多肥区・中肥区では旺盛な恢復がみられ,少肥区・無肥区に比べ顕著な差があった.8.以上の諸点を総合すれば,樹木の公害抵抗性を高め,被害よりの恢復を促進し,被害を最少限度にとどめるための対策として,施肥は有効な手段である.9.従来都市緑化樹木に対して,施肥はほとんど行われていないが,今後緑化対策の一環として,施肥は不可欠の要素として取り入れるべきである.
著者
本多 〓
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.19-24, 1968-12-29

公園緑地の存在によつて、大気汚染とくに煤塵に対して、その遮断効果または捕捉効果を把握するために、都心部にある大緑地として皇居内及び皇居外苑について、その外囲より内部に至る樹木の築上に附着する煤塵量の推移と、その附着のの状況について調査測定を行つた。(1)皇居外苑に比べて、坂下門内宮内庁舎前では1/6に減少し、その内部の乾道では1/41に、最も内部の吹上御苑の中では実に1/40に減少し、緑地の存在による煤塵防止効果は顕著であつた。それは緑地のもつ空間のひろがりに由来する効果と、その上に存在する樹木群の防波堤としての機能の相乗的なあらわれであると考えられる。(2)葉面気孔閉塞度よりみれば、外苑のクロマツの葉は、平均80%以上の気孔が閉塞されていたが、それより1km以上内部に位置する吹上御苑の中では、全く閉塞されないかまたは極めて僅少にとどまつた。(3)本年生葉に比べて前年生葉は場所により約3割増より3倍以上多く附着し、気孔閉塞度においても同様の傾向を示した。(4)クロマツの葉面で最も煤塵の附着しやすいのは、葉緑の極めて微細な鋸歯のある部分で、湾曲面、平坦面では粗に附着している。1本の葉上では葉の先端より中央部にかけて多く、基部に行くに従つて粗になる。(5)大雨直後にも葉上の煤塵はかなり残存するので、樹木の生育悪化を防ぐためには、自然の降雨のみによらず、煤塵の固着化の進まないうちに度々洗滌を行うことが望ましい。