- 著者
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石出 猛史
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.1, pp.1-9, 2001-02
洋の東西を問わず,古来より医療と呪術・信仰とは密接な関わりを持ってきた。これは形を変えて現在でも存続している。時代が進むに連れて,疾病の本態の究明・治療に解析的な手法が導入されるようになると,それまで経験的におこなわれてきたことから,有効な機序を見出し,それを診療に還元する方法がとられてきた。しかしとられた方法の実効性を検証するためには,多くの場合長期の予後の追跡を必要とする。この部分についてはやはり経験医学である。ここに医学領域における歴史学的思考法の重要性がある。現存する生物は,地球における生命誕生以来というより,地球誕生以来のエッセンスと考えるべきであろう。新たに開発される医療技術は,あらゆる意味において生命予後を改善すべきものでなくてはならない。本稿では,江戸時代当時の人々に身近にあった疾病を対象として,その取り組みについて触れる。