- 著者
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下田 和孝
中野 繁
北野 聡
井上 幹生
小野 有五
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 北海道大学大学院環境科学研究科邦文紀要 (ISSN:09116176)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.17-27, 1993-03-30
- 被引用文献数
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魚類群集への人為的影響を評価する目的で,知床半島の8河川で魚類相を調査し,標識再捕獲法による個体数推定を行なった.さらに,3河川では,知床半島の淡水域における優先魚種であるオショロコマについて,個体群構成を調査した.これらの調査の結果,国立公園に指定されているために,比較的良く自然状態が維持されてきた知床半島においても,魚類群集は砂防・治山ダムや遊魚などの人為的を受けていると考えられた.1.3科5属8種の魚類を確認した。これらの魚類は遡河回遊魚(カラフトマス,サクラマス,シロサケ),両側回遊魚(カンキョウカジカ,エゾハナカジカ,ウキゴリ,ミミズハゼ)および陸封魚(オショロコマ)の3タイプに大別された.2.遡河回遊魚は,堤高の小さい落差工の上流域においても生息が確認されたが,その上流に位置する堤高の高い落差工によって,遡上が制限されていると推定された.3.小型の底生性魚類である両側回遊魚の分布域は,主に最下流に位置する落差工よりも下流域に限定され,遡河回遊魚は遡上可能な堤高の小さい落差工であっても,両側回遊魚の遡上を制限している可能性が大きい.4.オショロコマの生息密度は,堤高の大小にかかわらず,落差工の上流・下流間では差異は認められなかった.しかしながら,砂防・治山ダムの設置にともなう土砂堆積のため,河床地形が改変されている場所では,オショロコマの生息密度は,自然河川に比べかなり低かった.5.遊魚漁獲による影響を受けやすいと考えられる河川のオショロコマは,河床地形が自然状態を維持している場合であっても,そうでない河川に比べ,生息密度が低いかあるいは,個体群構成が小型低年齢であった.