著者
矢部 和夫 伊藤 浩司
出版者
北海道大学
雑誌
環境科学 : 北海道大学大学院環境科学研究科紀要 (ISSN:03868788)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.107-129, 1982-10-25

1.ウトナイト沼温厚およびその周辺湿原(42°42'N,141°42'E)は,北海道の太平洋側の海岸低地に発達している勇払原野の一部である。これらの湿原植生について数量分類を行なうとともに,種群の分類および種間の分布相関の解析によって抽出された種群の,植生型に対する特徴的な結びつきを調べた。さらにまたオーディネーション法により,植生型相互の関係をも検討した。2.(1)の方法によって低層湯原植生は,ムジナスゲーヤチスゲ群落型,イワノガリヤスーツルスゲ群落型およびクロバナロウゲ-ミズオトギリク群落型に分けられた。このうち前者は,オタルマップ湿原やトキサタマップ湿原などの谷地形の湿原に,また後2者は,ウトナイト沼湿原や美々川湿原の平坦地の湿原に,それぞれ特異的に分布する。ムジナスゲ-ヤチスゲ群落型は,さらにムジナスゲ優占亜型とヤチスゲ優占亜型に,イワノガリヤス-ツルスゲ群落型は,イワノガリヤス優占亜型とツルスゲ優占亜型に細分された。3.より乾性の立地に成立する植生は,エゾイソツツジ群落型,ハンノキ群落型,ナガボノシロワレモコウ-ヒメシダ群落型およびオオミズゴケ-ヒメミズゴケ群落型の4つに分類された。4.抽水植物群落,ヨシ群落型と,マコモ,ミツガシワおよびヤラメスゲからなる抽水植物群落型の2つにまとめられた。5.抽出された種群を特徴種群として明確に持つ植生は,ヤチスゲ優占亜型,クロバナロウゲ-ミズオトギリ群落型,ナガボノシロワレモコウ-ヒメシダ群落型,エゾイソツツジ群落型およびオオミズゴケ-ヒメミズゴケ群落型の5つであった。6.本研究で得られた群落型と,すでに発表されていた低層湿原の基群集-群集分類の結果との対応はあまり良くなかった。7.オーディネーションの4軸のうち,2つの軸は水位勾配と関係を持っていると推定され,残り2軸のうち1軸は谷湿原と平坦地湿原との地形のちがいを反映しているものと考えられた。また他の1軸について,関係を持つ環境要因を推定することはできなかった。

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ウトナイ湖、歩く前にこれをナナメ読みしとけばよかった。そういう余裕に欠けていたね。http://t.co/B7nHSGZ http://t.co/Rch9AcV

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