著者
加藤 由紀子
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.97-109, 2003-03

「基本的な動詞「分かる」は,初級の日本語の教科書にも必ず登場するものでありながら,その説明は教科書の中で十分になされていない。しかし,その語の意味は,和語の例にもれず幅広く,そのふるまいも特殊である。このことが,使用の際に日本語学習者が混乱する原因となっている。本稿では,「分かる」を「知る」と対比させながら,英訳・辞書の意味記述・教科書の取り扱いを通して,その意味特徴を明らかにし,アスペクチュアルな意味における特徴も明らかにすることを試みた。これらの考察から,以下のことが判明した。(1)「分かる」と「知る」の混同の原因のひとつは,辞書や教科書の意味記述において,一つあるいは二つの語で,対象語を置き換えることにある。置き換えられた語と,対象語には微妙な意味のずれがあるのに,それが無視されているのである。(2)「分かる」は,「知る」より意味範囲が広く,従来考えられていた意味に加え,「感覚的に察知する」ことを表す「感覚の動詞」という要素がある。(3)「分かる」は,「分かった」時点に視点を置きながらも,そこに至る過程を視野に入れている「線の動詞」であるのに対して,「知る」は,「知った」瞬間だけが意識される「点の動詞」である。

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