- 著者
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岡野 一郎
- 出版者
- 東京農工大学
- 雑誌
- 東京農工大学人間と社会 (ISSN:13410946)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.55-64, 2005-03-26
今日の環境問題を「共生」という視点と結びつけるとき,まず思い浮かぶのは,「人間と自然との共生」ということであろう。人間が自然を管理・支配しようとすることが問題なのであり,自分たち人間と自然とが同じ存在価値を持つことを認め,両者が両立するような関係を構築していくべきだということになる。人間と自然が「共に生きられる」条件を見いだすことが急務であることは歴然たる事実である。だが,それは,人間と自然が「共に生きよう」とすることで実現できるものであろうか?つまり,人間と自然の共生を阻むものは,自然と「共生」しようとしない人間の意識や文化の問題なのだろうか?本稿では,環境破壊の要因として,人間の側での文化なり意識なりを措定することが可能かどうか,主に加藤尚武の議論(加藤 1991)を追いつつ検証していきたい。