著者
開發 孝次郎
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.A101-A116, 2004-07-30

近年になり日本は天皇の存在によって大きな動乱が二度未然に防がれ救われた、と言われています。明治維新では錦の御旗が大きな内戦を阻止し、先の大戦では昭和天皇の終戦宣言が秩序だった終戦、武装解除を可能にしました。しかし明治以降の天皇の存在のあり方は日本の歴史の中では非常に特殊でした。維新後、国家経営者は天皇を国民統合の中心に据える戦略を取り、明治憲法もその線に沿って作られました。明治憲法は当時としてはなかなか立派なものでしたが、最高権力がいずれに属するのか必ずしも明確ではありませんでした。当時は元勲が天皇の周囲をかため、憲法の不備を充分に補っていました。しかし昭和天皇が即位した時点では唯一人西園寺公望しか残されていませんでした。そこに権力の空白が生じ、国家経営に失敗することになってしまいました。本論では満洲事変を中心に天皇、権力機構、当時の日本の国内事情、国外事情、中国事情を考察します。

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