- 著者
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岩科 司
- 出版者
- 国立科学博物館
- 雑誌
- 筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.1-18, 1996-12
- 被引用文献数
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21科63種の植物の紅葉に含まれているクリサンテミン(cyanidin 3-O-glucoside),イデイン(cyanidin 3-O-galactoside)およびその他のアントシアニン色素が高速液体クロマトグラフィーによって検出された。以前にHayashi und Abe(1955)によって指摘されたように,ナラガシワ,ミズナラ,イヌザクラ,クマイチゴ,コマユミ,数種のカエデ科植物などの紅葉に含まれる主要アントシアニンの多くはクリサンテミンであることが判明したが,一方,ペーパーおよび薄層クロマトグラフィーでは識別が困難であるイデインもまた多くの植物で主要,あるいは微量の如何にかかわらず,クリサンテミンと共存していることが判明した。さらに,ペニシタン,コゴメウツギ,ナツツバキおよびホツツジではクリサンテミンはまったく検出されず,主要アントシアニンはイデインのみであった。これまで,紅葉からのイデインの検出はタデ科など(Kato 1982)極めて限られていたが,実際にはイデインはクリサンテミンとともに多くの植物の紅葉に含まれているのではないかと推定された。