著者
田中 法生 福田 陽子
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.53-58, 1999-12

筑波実験植物園において,サクラソウの遺伝的多様性を維持できる自生地外保全のための基礎データを得るために,園内3カ所のサクラソウ個体群の自然交配による結果率,種子生産量を調査した。これらを自生地2カ所のデータと比較したところ,送粉者が制限され種子生産量が低いと報告されている田島ヶ原の個体群よりも多く,送粉者が多く種子生産量が高いと報告されている北海道の個体群と同程度であることが示された。園内での種子生産は,送粉者の豊富な自生地と同様の良好な状態と評価できる。また,園内において何らかのマルハナバチ類が頻繁にサクラソウを訪花したことが推測された。今回,サクラソウを訪花するマルハナバチ類は確認できなかったが,園内の他の植物に訪花する2種類のマルハナバチ,コマルハナバチとトラマルハナバチが観察された。
著者
福田 陽子 田中 法生
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-18, 2000-12

筑波実験植物園において,サクラソウの遺伝的多様性を維持できる自生地外保全のための基礎データを得るために,サクラソウの主要ポリネーターであるトラマルハナバチによる,春から秋にかけて園内で開花する植物への訪花状況を調査した。その結果,4月下旬から10月上旬までトラマルハナバチが利用する14種類の植物が連続的に開花し,花蜜及び花粉収集行動が観察されたことから,トラマルハナバチが恒常的に活動を行い,コロニーの生活史を全うするのに良好な環境であると評価できた。7月中旬から8月中旬の気温の高い期間に,マルハナバチの減少がみられたが,これは園内の花資源の不足ではなく,夏の高温が原因と考えられた。また今回,サクラソウでビロードツリアブによる花蜜収集が観察されたが,トラマルハナバチの訪花は観察されなかった。しかし花弁に見られた多数の爪痕はマルハナバチ類の訪花の可能性を示した。
著者
小西 達夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-51, 1999-12

最近,野生植物の生存が脅かされ,その繁殖と保存が望まれている。しかしながら,現状は生殖様式など基本的な問題すら不明なものが多く,その解明や保存法の確立が急務である。ヒスイカズラStrongylodon macrobotrys A. Gray (2n=28)はフィリピン諸島の限られた熱帯降雨林にしか自生しないマメ科の蔓性木本植物で,自生地では環境の悪化により絶滅が危惧されている。わが国には1964年頃より植物園などに導入されている。しかし,温室内での自然結莢は皆無であったことから,生殖様式を解明し,人工受粉ならびに組織培養技術による繁殖と保存法を進めた。主な結果は下記の通りである。1.本研究に供試したヒスイカズラは,シンガポールから東京大学理学部附属小石川植物園に導入された苗を母本とする挿し木苗の分譲を受け,筑波実験植物園熱帯降雨林温室内に植栽された株(TGB. ace. no. 33040)である。これまで,毎年開花するが,全く不結莢であった。2.花器構造ならびに花粉稔性などについて詳細に観察した結果,不結莢の原因は生殖器官の形態的異常によるものでは無いことを明らかにした。3.人工受粉を行って,受粉前と後の柱頭について詳細な組織・形態学的調査を行い,その結果結莢に成功した。特筆する点は,(a)開花時の柱頭周辺部には花粉が到達しているが,(b)柱頭先端部にはパピラ間より浸出したと思われるドーム状構造をしたクチクラ層が存在し,花粉のパピラへの接触を妨げている。この観察結果より,(c)柱頭先端部を指で突くことによりドーム状構造のクチクラ層を破壊し,花粉をパピラに到達させたことである。4.受粉が成立するためには,柱頭先端部のドーム状構造の破壊が不可欠であると考え,パピラに損傷を与えずにドーム状構造層を破壊し,花粉をパピラに到達させるトリッピングによる人工受粉法を考案した。この人工受粉法により結莢を得た。5.以上の結果,ヒスイカズラの自然条件下での結莢には,送粉動物が深く関与していると推察された。そこで,比較的自然に近い生態系を再現したミニ生態系モデル施設である長崎バイオパーク園内の熱帯館に,ヒスイカズラを植栽したところ,送粉動物による自然結莢が起こり,莢内の種子は発芽し次代植物が得られた。送粉動物として,同施設内に放飼されているヒインコが関与した可能性が高いと推察された。このことはヒスイカズラの種子繁殖にとって生態系を維持することの重要性を示唆する。さらに,これらの事実は,ヒスイカズラの受粉生態学に員献するものと考えた。6.ヒスイカズラの早期落莢は,胚珠内の胚の発育過程が正常に進んでいたことから不受精による結果ではないことが判明した。7.人工受粉で得られた種子は,採り播きですべて発芽したが,実生個体には約28%の高頻度でアルビノ個体が出現した。このことから,ヒスイカズラが自然にあってヘテロ個体として適応性を高めていたと推察された。したがって,ヘテロ性を維持させるために他家受精を可能とする自然環境下での送粉動物の必要性が強く示唆された。8.人工受粉により得られた個体は播種後4年目に開花し,これまで15株が開花した。花色を調査したところ,親より濃い個体が3,親と同色の個体が8,親より淡い個体が4に分離した。この結果,本実験に供したヒスイカズラが次代で遺伝的変異を生じ得るへテロ個体であることを示した。このことから,種子繁殖により,園芸的にも価値のある個体の選抜育成が可能であることが示された。9.組織培養はヒスイカズラの苗の生産にとって有効な手段であることを明らかにした。胚珠・胚培養では,落莢胚珠内の接合期,球状胚および若い子葉胚を含む胚珠の培養をMS培地(Murashige and Skoog 1962)で培養し,胚珠の発育には成功したものの発芽種子を得るには至らなかったが,落莢胚の救済の可能性を見出した。10.裂開前の莢より得た種子を無菌水のみで培養したところ,すべて発芽し,幼苗を得た。この幼苗は継代培養をしないでも子葉が肥大成長し,蔓も著しく伸長し,2年間以上生存し続けた。このことから継代培養を繰り返すことにより,さらに長期保存が可能であることを示した。以上の方法は短命種子であるヒスイカズラの繁殖と保存にとって,極めて有効であると考えた。また,種子からの幼苗育成法は自生地への復元作業を行う上で,極めて効率的であると考察した。以上,本研究におけるこれらの結果は,ヒスイカズラのみならず,他の絶滅危惧植物の繁殖と保存にとっても多くの情報を与えるものと確信した。
著者
海老原 淳 岡 武利 松本 定
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.17-25, 2005-12
被引用文献数
1

The Vandenboschia radicans complex, one of the 'cosmopolitan species' of pteridophyte, shows great morphological variation within the Japanese Archipelago. The study by Ebihara et al. (2005) which clarified the complicated origin of this complex resulted from reticulate evolution also revealed that the Pacific coast of the Kanto region possesses the most diversified genomic-formula. In this study, we focused on the V. radicans complex of the region (Izu, Miura and Boso Peninsulas) by enriching samples, and discussed possible causes for the diversity. Of the three peninsulas, Miura Peninsula exhibits particularly diversified genomic formula in spite of less variable alleles and narrower distribution range than the other two. These results suggest that the present populations of Miura Peninsula have been locally formed by reticulate evolution based on limited number of ancestral lineages.
著者
橋本 保 初島 住彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.41-44, 1991-12

鹿児島県の標高100mにも達しない鶴田ダムの下方(南側)で大平豊氏が採集されたランである。Neottia (サカネラン属)の新種と認め,ここに発表する。本種の蘂柱の形を観察すると,花期には鈍三角形の柱頭裂片二っ(2片をあわせると,中央に凹みのある逆梯形に見える)と楕円形の小嘴体が共に直立し,葯はやや後方に反り,葯の下には短いが明瞭な花糸が,とくに発達初期の花で認められる。これらの形質のうち,花糸の存在はChen(1979)によればArchineottia属(日本からもA. japonica Furuseが発表されている)の重要な一形質であるというが, Neottia属には柱頭裂片や小嘴体が発達しないという。しかし本種以外の例では,前川(1971)がN. asiatica Ohwi (ヒメムヨウラン)に小嘴体と花糸が共にあることを図示している。これらの事実から考察し,その他の形態が各種類間で類似していることを勘案すると, Chen説による属の概念は再検討する必要があると思われる。属の基準種であり,かつまた類縁が近いと思われるN. nidus-avis (L.)L. C. Rich. (エゾサカネラン,冷温帯性)と比べると,本種は丈が低く,花軸と子房に腺毛があり,唇弁の先の裂片がさらに短い。N. nidus-avisの柱頭裂片は極めて短く,葯は蘂柱の上に直接乗っている(Rasmussen 1982)。中国・四川から発表されたN. brevilabris Tang & Wangは発表された記載や図からみると最もよく似た種類のように思えるが, N. brevilabrisは丈が40cmほどにもなり,花はより小さく(Tang & Wang 1951),柱頭裂片はほぼ円形という(Chen 1979)。日本の代表種であるN. papilligera Shltr. (N. nidus-avis var. manshurica Komarovサカネラン,冷温帯性)も丈は一般に高い。茎と花柄子房には密な腺毛があり,唇弁の先の裂片は細長くて両側に開いているし,柱頭裂片の発達も少ないので明かな別種である。
著者
橋本 保
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-40, 1990-12
被引用文献数
5

Lecanorchis (ムヨウラン属)は小形の腐生ランで,宮城県以南の日本,台湾,およびシッキムからニューギニアにかけて分布が確かめられている。これまで発表された学名は新組合わせと命名上の新名を除き24種5変種であるが,それらのうち11種3変種が日本からのものであった。これらは主として常緑林の林床に生え,個体数が比較的少なく,開花株に出合う例も少なく,花や株の色も目立ち難く,姿も単純で,開花株以外はあたかも樹木のひこ生えが立ち枯れているようにみえる。これらの条件がおそらく主な理由で,これまで本属の分類研究は極めて不充分であった。そこで日本産の材料を主として用い,本属における植物体全体の特徴を含め,花部を解剖して種類の特徴の詳細を明らかにしようと試みた。日本産のLecanorchisをここでは7種6変種認識し,これらの種類への検索表を作り,記載を行った。すでに示した3種類(Hashimoto 1989)を除く,すべての分類群の花部を図解した。またこれらを4節に大別した。唇弁の大脈の数については,これまで注目されたことがなかったが,ここではじめて分類形質としてとりあげた。LecanorchisおよびTrilobae両節の大脈が偶数であることは注目に値する。唇弁の緑の単細胞毛,葯の裂開口周辺の毛などはこれまで分類上の特徴とされたことがなかったが,ここでは種の異同を認識する形質として取り上げた。
著者
岩科 司 八田 洋章
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.139-146, 1998-12
被引用文献数
1

Mastixia trichotoma Blume (ミズキ科),キジュ(Camptotheca acuminata Decne,ヌマミズキ科),ウリノキ(Alangium platanifolium (Sieb. & Zucc.) Harms var. trilobum (Miq.) Ohwi,ウリノキ科),シマウリノキ(Alangium premnifolium Ohwi,ウリノキ科)およびハンカチノキ(Davidia involucrata Baill., ハンカチノキ科)の葉に含まれるフラボノイド化合物がハンカチノキを除き,初めて報告された。これらの植物に含まれているのはいずれもフラボノールの配糖体で, M. trichotomaからはkaempferol 3-O-glucosideと3-O-galactosideおよびquercetin 3-O-glucoside,キジュからはkaempferolの3-O-glucosideと3-O-galactoside,およびquercetinの3-O-glucoside, 3-O-galactosideと3-O-rutinoside,ウリノキからはkaempferol 3-O-rutinoside,およびquercetin 3-O-glucosideと3-O-rutinoside,シマウリノキからはkaempferolの3-O-rutinoside, 3-O-rhamnosylgalactoside, quercetinの3-O-glucoside, 3-O-galactosideと3-O-rutinoside,およびisorhamnetinの3-O-rhamnosylglucosideと3-O-rhamnosylgalactoside,そしてハンカチノキからはkaempferolの3-O-galactoside,およびquercetinの3-O-glucoside, 3-O-galactosideと3-O-arabinosideが分離同定された。これらのフラボノイドはいずれもkaempferol, quercetinおよびisorhamnetinの3-O-モノ-あるいはジ-配糖体であり,著者らが以前に分離同定を行った大多数のミズキ属(Cornus)植物のフラボノイド組成と極めて類似していた。以上のような点から,限られた種の分析ではあるものの,上記4科の種属はフラボノイドを指標とした化学分類学的観点からみると,ミズキ科のうちでもフラボノールでなくフラボンの配糖体を含むハナイカダ属(Helwingia)や,糖として主にキシロースを結合しているフラボノールの3,7-O-配糖体が主要成分であるアオキ属(Aucuba)よりもむしろミズキ属に近縁であると推定された。
著者
松本 定
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-141, 2003-12
被引用文献数
3

The ornamental fern, Cyrtomium falcatum (L. f.) C. Presl native in Eastern Asia naturalized coastal region of the warm-temperate zone in the world. The chromosome number for cytotypes on 186 localities (341 individuals) and the spore-number per sporangium for reproductive mode on 794 localities (2,467 individuals including herbarium specimens and population samples) in Japan were surveyed. Four cytotypes, two sexual diploid (A1: dwarf, A2: normal), one sexual tetraploid (C) and one apogamous triploid (B) were mainly recognized. In central Japan, A1, B and C types show that the habitat segregation among sea-cliff, coastal grassy ground and forest floor are sympatric. While, A1 and A2 types show that the geographic segregation between northern part and southern part in Japan are allopatric. And also, several polyploid hybrids were recognized at contact zones of each cytotype and another apogamous triploid species. There are one sterile triploid (A1×C), one apogamous and sexual tetraploid (A1×B) and four apogamous pentaploid [C×B (♂), C×D (D: C. laetevirens (Hiyama) Nakaike: ♂), C×E (E: C. fortunei (J. Sm.) var. clivicola (Makino) Tagawa: ♂), C×F (F: C. caryotideum (Wall, ex Hook, et Grev.) C. Presl: ♂). The polyhaploid (apogamous dihaploid) was gotten from reduced spores (64 spores in a sporangium) of the tetraploid (A1×B). This apogamous dihaploid considered to make variation of B type as donor of sperm by backcross (hybrid cycle: 3x to 4x to 2x to 3x). Artificial hybrid for genome analysis were synthesized as follow, fertile diploid (A1×A2), sterile triploid (A1×C) and sterile and apogamous tetraploid [C×(A1×B)]. Sexual meiosis of all hybrids including natural apogamous hybrids and dihaploid were analyzed for the basic 4 types, A1, A2, and B types were same genome as AA, AA and AAA respectively, but C type was allotetraploid having AABB (see Fig. 3-5). On the genetic background of agamospory, the apogamy was considered to be one dominant gene from the segregation ratio of gametophytes to originate in reduced-spores of tetraploid hybrid, A1×B. And also linkage of apogamy and diplospory genes considered as to be present, for reason to show diplospory on the almost dihaploid. On the variation of mating systems, ratio of the gametangium formation (mix or separate antheridia with archegonia) and sporophyte formation by intragametophytic selfing test were investigated on the A1, A2 and C types, and one hybrid A1×A2. A2 and C were separate types, but A1 was variable from separate to mix type and the hybrid was intermediate type with the half ratio. Sporophyte formation of the mix types including parent (A1) of the hybrid were high frequencies by self-fertility, but that of separate types were low in A1 and A2 types of diploid or relatively low in C type of tetraploid. And also sporophyte formation of separate types later one month than that of mix type. On the comparative study under the cultivation, dwarf form of A1 type specialized genetically from A2 type was considered as 'Progenesis'. The shape of B type intermediates between A1 and A2 types. While, C type was distinguished from another types with shape of pinna and presence of micro-scale on upper surface of frond. Correlation of the ecological structure and speciation on basic 4 cytotypes of Cyrtomium falcatum complex in Japanese Archipelago were considered from viewpoint of species ecological study (see Fig. 4-1). Most basic A2 type growing subtropical maritime forest with cross mating evolved under K-selection. The A1 type growing warm and cool temperate sea-cliff evolved under r-selection from A2 type, as follows, the first by genetic drift, migrating only grayish indusium strain with self mating, the second by progenesis, shorten the life cycle from three years or more to one or two years. Most widely spread B type growing the coastal forest edge with apogamous reproduction evolved by hybridization at several times or by hybrid cycle from A2 and A1 types under competition environment. The C type growing warm temperate wetly forest floor evolved under K-selection, by hybridization between A2 type and unknown another species of Cyrtomium. Taxonomy of basic 4 types on Cyrtomium falcatum complex was as follows by examination of two holotype specimens. Cyrtomium devexiscapulae (Koidz.) Ching (C type) C. falcatum (L. f.) C. Presl subsp. falcatum (B type) subsp. littorale S. Matsumoto (A1 type) subsp. australe S. Matsumoto (A2 type)
著者
平山 良治 小西 達夫 橋本 保
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-51, 1987-12

The relationship between certain infraspecific taxa or morphological variations and soil environments in Viola verecunda of Japan are surveyed. 1. The plants, representing the diagnostic characters of V. verecunda var. vercunda f. verecunda, were found at Rokko-1, Aoi-1 and Kijima-1, inhabit similar environments in vegetational and pedological conditions. 2. V. verecunda var. subaequiloba, was found at Rokko-2, inhabits a similar vegetational condition as the former, but the soil moisture content is very high. 3. The plants, representing the diagnostic characters of V. verecunda var. verecunda f. radicans, were found at Rokko-3 and Aoi-2, inhabit unstable or disturbed soil. The nutrients and natural fertility of soil are poor. The soil of these habitats are too much wet by stagnant water. 4. V. verecunda var. fibrillosa, was found at Kijima-2, inhabits the peat soil where it is low pH values and aquatic conditions.
著者
岩科 司
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-18, 1996-12
被引用文献数
3

21科63種の植物の紅葉に含まれているクリサンテミン(cyanidin 3-O-glucoside),イデイン(cyanidin 3-O-galactoside)およびその他のアントシアニン色素が高速液体クロマトグラフィーによって検出された。以前にHayashi und Abe(1955)によって指摘されたように,ナラガシワ,ミズナラ,イヌザクラ,クマイチゴ,コマユミ,数種のカエデ科植物などの紅葉に含まれる主要アントシアニンの多くはクリサンテミンであることが判明したが,一方,ペーパーおよび薄層クロマトグラフィーでは識別が困難であるイデインもまた多くの植物で主要,あるいは微量の如何にかかわらず,クリサンテミンと共存していることが判明した。さらに,ペニシタン,コゴメウツギ,ナツツバキおよびホツツジではクリサンテミンはまったく検出されず,主要アントシアニンはイデインのみであった。これまで,紅葉からのイデインの検出はタデ科など(Kato 1982)極めて限られていたが,実際にはイデインはクリサンテミンとともに多くの植物の紅葉に含まれているのではないかと推定された。
著者
矢野 義治
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.37-44, 1989-12

The effect of soil moisture environment on the growth and development of plants was conducted from the transfer of water in the soil-plant-atmosphere continuum. The Japanese red pine (Pinus densiflora Sieb. et Zucc.), 7 years after transplantation in our botanical garden and the chinaberry tree (Melia azedarach L.) grown on a pot for 3 years were subjected to this test. The chinaberry tree is a species that experienced significant apparent water stress. Soil moisture was measured by a tensiometer and gravimetry, and sap flow velocity was measured by a heat pulse method. At the distances of 40cm and 80cm from the Japanese red pine, soil moisture was high, whereas at the distance of 120cm the moisture tension was low in the same as the moisture state of bare land where plant roots are absent. This phenomenon coincides with the root quantity distribution and seems to be caused by drying due to the absorption of soil moisture by a root. The sap flow velocity of the Japanese red pine changes gradually from 2cm/hr before sunrise to the maximum value of 20.6cm/hr at 12 o'clock and decreases in the afternoon to 2cm/hr two hour after sunset in correspondence with the amount of solar radiation. Daily changes of soil moisture and sap flow velocity in the chinaberry tree are quite similar to those in the Japanese red pine. When the drying of soil is advanced a soil moisture content ratio reached about 51%, sap flow velocity is lowered to 3cm/hr is spite of sufficient solar radiation. The deficiency of soil moisture causes wilting and obstructs the physiological functions of plant.
著者
八田 洋章
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-33, 1995-12

It is very difficult to quantitatively recognize the tree shapes as three dimensional body, although we have been unconsiously looking at them abundant in our surroundings. Various features of response of trees to their environment cause slow progress of the study of tree architecture. This paper reviews an outline of studies in tree form and author's work on shrub architecture. Attention was paid to significance of seedlings on the architectural study, because the basic growth pattern and stem form are controlled by the genetic potential. The author also noticed some of shrub in which plant body is composed of many different-aged stems and they are renewing within 2-5 years sucessively. In these plants, it is possible to investigate in detail the process of shoot growth from sprouting to death after fruiting. The constructive process of shrubs architecture will be expected to prove by these approaches. We have examined ca. 30 species every year with special reference to the branching patterns of seedlings. Noteworthy results on seedling include that (1) seedlings initially may be show a species specific growth process under a genetic control; (2) then they strongly influence the later development of tree form; and (3) species having a similar tree form may have different ways of architectural development.
著者
ヒルス レン
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.79-86, 2002-12

A key to the seven genera of the family Calymperaceae known to occur in Vanuatu is presented and an account given of the collections of Calymperaceae made in Vanuatu by Higuchi in 1996, and by Sugimura in 1997. Fifteen of the 32 taxa occurring in Vanuatu are noted, six of these are new records. A summary is presented of the taxa included in the checklist of Vanuatu mosses by Higuchi (1996) that have been affected by subsequent taxonomic revision.
著者
田中 法生 中野 紘一
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-2, 2005-12

Najas guadalupensis (Sprengel) Magnus var. floridana Haynes and Wentz (イバラモ科)が日本で初めて確認された。その分布域は,南フロリダ,グアテマラ,イスパニョーラ島である。
著者
遊川 知久
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-46, 1995-12

フィリピンに自生する,ラン科セッコク属の1新分類群Dendrobium ×usitae Yukawaを記載する。1994年4月,フィリピン,ルソン島北部のカラヤン諸島,バブヤン島海抜500-700mでVillamor T. Usita氏が発見した植物の同定を依頼された。Dendrobium bullenianum Rchb. f.とDendrobium goldschmi-dtianum Kraenzl.にきわめて類似した形質を持っものの,花色が赤紫をおびたオレンジ色で濃赤紫色の条が入ること,唇弁基部の隆起がやや鋭形であること,小し体が鈍頭の三角形であることで,両種から明確に区別される。表1に示されるように,これらの形質は1花序あたりの花数,花の大きさといった量的形質とともに,両種の中間を示す。さらにこの植物は, D. bullenianumとD. goldschmidtianumがそれぞれ約40,60%混生する場所に,少数の個体が自生する。一方,D. bullenianumとD. goldschmidtianumの多数の個体を観察した結果,上記の諸形質は安定しており,この植物がいずれかの種の種内変異とは考えられない。これらの点からこの植物を,D. bullenianumとD. goldschmidtianumの自然交雑種と判断し,Dendrobium ×usitaeと命名する。なお親分類群のひとつ,Dendrobium bullenianumは,異名のDendrobium topaziacum Amesで栽培されることが多い。他方,Dendrobium goldschmidtianumは,従来Dendrobium miyakei Schltr.とされてきたものだが,Christenson (1994)によって,前者が正名であることが明らかにされた。D. miyakeiの分類学的問題については,Yukawa and Ohba (1995)を参照されたい。