著者
山田 ゆかり 天野 寛
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-12, 2002-04-01

近年,不登校,ひきこもり,校内暴力などの学校不適応を中心とする青年期の心理的適応問題の増加が指摘されている.大学生においてもこれは例外でなく,自己不確実感や不全感を抱え,友人ができない,うまくコミュニケーションがとれない,学内での居場所を見つけられないなど,大学生活への適応に大きな困難を抱える学生が増えてきている.大学としても,学生の心理的適応にこれまでになく配慮を必要とする局面となってきているのである.こうした問題意識を背景として,大学生の適応性に目を向け,自画像を用いて自己意識のあり方と適応性の関連性について検討することを意図した.本稿ではまず,大学生の自画像について分類を行い,描画に現れる特徴について検討した.その結果,自画像は,全体的な印象,顔の表情,特異な表現や不自然な表現,詳細さ,描画全体のバランスなどから,不適応状態から何らかの行動化の可能性が指摘されるA群,抑うつ的傾向が指摘されるD群,適応状態にあることが示唆されるN群,分類不能群の4群に分類された.また,A群,D群,N群別に,日常生活行動における適応性の1つの指標として学業成績との関連性を検討したところ,3群間で大きな差のあることが認められた.さらに,3群の自画像の描画には明らかに異なる特徴のあることが指摘され,自画像から適応性を査定することの妥当性が示唆された.

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