著者
小俣 謙二 天野 寛
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.19-27, 1997-04-01

現代青年の心理的特徴を理解するための一つの基礎的資料を得る目的で, 若者の日常生活で身近なものの一つであるテレビCMに対する女子短大生の評価とその理由について分析を行った.方法は, 好きなCMと嫌いなCMおよびその理由の自由記述を求めるアンケート調査と, 実際にCM(10本)を呈示し, そのイメージを調べる実験の二つを用いた.その結果, いずれの方法でもタレントに代表されるCMキャラクターのイメージ(親しみやすさ, かわいらしさ)と音楽の好み, CM全体の明るさ, 愉しさが重要な判断基準となっていることが示された.同時に, 明るさやユーモアも, それが知性に欠けると受けとめられる場合やくどいと思われる場合には否定的に評価されることも示された.また, 全体的には判断基準にこうした共通性がみられるものの, どのタレント・音楽が好まれるかなど, その内容には多様性がみられた.こうした特徴は現代青年の明るさ志向や自己感性の重視とその表現への拘りなどの心理的特徴と関連があると思われる.
著者
水野谷 武志 粕谷 美砂子 齊藤 ゆか 伊藤 純 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 天野 寛子 伊藤 セツ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.877-885, 2002

以上, 本報ではまず, 2000年世田谷生活時間調査の重要な調査設定として, 調査単位, 典型的標本, 公募方式による調査協力者, を検討した.次に, 年齢, 学歴, 職業および収入の分布についての政府統計調査データとの比較対照によって, 本調査協力者の代表性を検討した.その結果, 調査協力者は, 高学歴, ホワイトカラー的職業, 高収入, である可能性が高いことが示唆された.<BR>調査結果から注目される点は, 平日の生活時間配分では, (1) 妻常勤の夫妻の睡眠時間が特に短いこと, (2) 夫の収入労働時間は1日の約半分に達していること, (3) 家事的生活時間には明確に夫妻差 (妻>夫) があり, さらに, 妻の収入労働時間が長いほど妻の家事的時間が減少し夫の時間が増加する傾向 (常勤妻<パート妻<無職妻, 常勤妻の夫>パート妻の夫>無職妻の夫) を確認した.休日では, 収入労働時間以外の時間が平日に比べて全体的に増えるが, 無職妻の家事的生活時間は減り, また, 夫に比べて妻の社会的・文化的生活時間は短くなる傾向にあった.<BR>次に家事的生活時間および社会的・文化的生活時間の行為者比率では, (1) 平日の「食事の準備と後片付け」は, 妻が7割以上であるのに対して夫は4割以下であった, (2) 「テレビ・ラジオ」の時間が夫妻の社会的・文化的生活時間の中で平日, 休日とわず最も長くなっていた, (3) 常勤夫妻の平日の「だんらん」が他の夫妻に比べて低かった, (4) 夫に比べて妻の「読書」の比率が全体的に高かった, (5) 常勤妻の平日の行為者比率は, 全般に, 他の妻に比べて低い, (6) 無職妻の休日の行為者比率は, 全般に, 平白に比べて減少する傾向にあった.<BR>最後に過去3回の調査結果 (1990, 1995, 2000年) を比較してみると, 全体的な傾向として, 平日では収入労働時間が増加し家事時間および睡眠時間が減少し, 休日では社会的・文化的生活時間が増加した.
著者
井出 政芳 山本 玲子 宇野 智江 鈴木 祥子 伊藤 優子 早川 富博 加藤 憲 天野 寛 宮治 眞
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.726-744, 2014 (Released:2014-03-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

過疎の進行する中山間地に住まう高齢者の<この場所>に係わる愛着を評価するために, 質問票による調査を行なった。質問票は, 高齢者の主観的幸福感測定のために汎用される古谷野による生活満足度尺度K (9項目)と, 今回独自に作成したトポフィリア (場所愛) に係わる質問項目 (6項目) の計15項目から成る。僻地巡回検診において, 調査主旨を説明し了解を得た有効回答者120名 (平均年齢: 74.5±9.5歳) の回答について因子分析を行ない以下の結果を得た。 ①居住地別愛着度得点には有意差を認めなかったが, 居住地別生活満足度得点には有意差を認めた (p<0.001; ANOVA)。一方, 年齢と生活満足度との間には有意な相関を認めなかったが, 年齢と愛着度得点との間には有意な正の相関を認めた (r=0.234, p<0.01)。生活満足度, すなわち主観的幸福感は年齢によらず居住地の影響を受けるが,逆に場所への愛着度は居住地によらず年齢の影響を受けることが示唆された。 ②トポフィリアに係わる質問6項目の因子分析により, 2因子が抽出された。一つの因子は<この場所>から離れたくないパブリックな感情を, もう一つの因子は<この場所>が好きとは言えないプライベートな感情を意味している, と解釈できた。 ③ (a) 生活満足度尺度, (b) トポフィリア, および (c) 「<この場所>を離れて仕事をしたいと思ったことがあるかどうか」の質問の三つ組を指標として, 居住地別に対象者の心情を評価すると, 主観的幸福感 (a) も, <この場所>に対する愛着度 (b, c) も, ともに低い地域が同定された。これらの地域は, 通院困難性の甚大な地域内に存在し, 通院介助・在宅介護・施設入所など高齢者の医療福祉に係わる対応において, 心情面についての配慮が特に必要であると考えられた。
著者
伊藤 君男 天野 寛 岡本 真一郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-27, 1998-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 緊急事態における避難行動に見られる事前の探索経験と集合行動の効果の検討である。実験室内に被災状況を模した迷路を作製し, 被験者の実際の脱出行動を観察した。実験では, 被験者は電気ショック装置を持った実験者から逃れるように教示された。実験1 (被験者64名) は, 2 (探索経験の有・無) ×2 (単独脱出・集団脱出) のデザインで行われた。探索経験は単独で行われ, その後, 単独または4人集団で実験が行われた。その結果, 探索経験は脱出所要時間の短縮を促進するという結果が得られた。また, 単独-未経験条件の被験者は他の条件の被験者と比較して, 脱出に要した時間を長く認知しているという結果が得られた。実験2 (被験者44名) では2種類の出口を設定し, 探索経験の際, 半数の被験者には一方の出口を, 別の半数の被験者にはもう一方の出口を学習させ, 本実験では4人集団で実験を行った。その結果, 集団脱出における同調行動が観察され, 集団による避難行動において, 不適切な行動であると考えられる同調行動の生起が示唆された。本研究の結果は, 探索経験の効果を証明し, ふだんの避難訓練の有益性を改めて示唆するものであった。
著者
大森 和子 加藤 悦 伊藤 セッ 大竹 美登利 好本 照子 阿部 和子 天野 寛子 宮崎 英子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.206-212, 1979-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

The purpose of this paper is to analyze the present state of the managerial housework on food, clothing, housing, and childcare, and to clarify wives overall evaluation of housework. The results of analysis were as follows : 1) 65% of wives went shopping for food everyday, because it is their daily routine.2) Husbands of most wives helped with some housework, like making the bed, shopping for food and so forth. Husbands of employed wives helped more then those of non-employed wives.3) Though many wives valued housework highly, they thought that employment and hobbies were also important. Wives who valued housework very highly believed that children under three years old should be brought up by their mothers.
著者
山田 ゆかり 天野 寛
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-12, 2002-04-01

近年,不登校,ひきこもり,校内暴力などの学校不適応を中心とする青年期の心理的適応問題の増加が指摘されている.大学生においてもこれは例外でなく,自己不確実感や不全感を抱え,友人ができない,うまくコミュニケーションがとれない,学内での居場所を見つけられないなど,大学生活への適応に大きな困難を抱える学生が増えてきている.大学としても,学生の心理的適応にこれまでになく配慮を必要とする局面となってきているのである.こうした問題意識を背景として,大学生の適応性に目を向け,自画像を用いて自己意識のあり方と適応性の関連性について検討することを意図した.本稿ではまず,大学生の自画像について分類を行い,描画に現れる特徴について検討した.その結果,自画像は,全体的な印象,顔の表情,特異な表現や不自然な表現,詳細さ,描画全体のバランスなどから,不適応状態から何らかの行動化の可能性が指摘されるA群,抑うつ的傾向が指摘されるD群,適応状態にあることが示唆されるN群,分類不能群の4群に分類された.また,A群,D群,N群別に,日常生活行動における適応性の1つの指標として学業成績との関連性を検討したところ,3群間で大きな差のあることが認められた.さらに,3群の自画像の描画には明らかに異なる特徴のあることが指摘され,自画像から適応性を査定することの妥当性が示唆された.
著者
天野 寛子 堀内 かおる 伊藤 セツ 森 ます美 天野 晴子 斎藤 悦子 松葉口 玲子 伊藤 純 水野谷 武志
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.739-745, 1996-08-15
被引用文献数
10

著者らは、1975年, 1980年, 1985年, 1990年の東京における雇用労働者夫妻の生活時間調査にひきつづき, 5回目の調査を1995年10月, 東京都世田谷区在住の子どもと同居している夫妻を対象に実施した. 本稿では目的, 方法, 調査概要を述べる. 本調査の主な目的は, 家事労働のみならず収入労働をも含めてその不払い労働の実態を明らかにすることである. 調査協力者は, 区発行の広報を通じて公募した. 合計162カップルが応募し, 有効回答はそのうち136カップル(272名)であった. (1) 過去の調査と比較して, 夫妻ともに収入労働により多くの時間を費やしていた. (2) 夫の火事労働時間は平均して微増していた. (3) 夫妻ともに生理的生活時間, 社会的・文化的生活時間は短かった.